ビューポイント No.2026-020 ホルムズ海峡危機を踏まえたわが国のエネルギー安全保障 2026年08月21日 福田直之米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発した2026年のホルムズ海峡危機は、わが国のエネルギー安全保障上の二つの脆弱性を顕在化させた。第1は、原油の調達先・輸送経路が中東とホルムズ海峡に集中し、迂回経路や米国産原油にも供給量、油種、物流上の制約がある点である。第2は、原油や石油製品等の量が確保されても、石油由来原料・製品が需要家に届くまでの供給網で支障が生じうる点である。 第7次エネルギー基本計画は、調達先の多角化、石油備蓄の維持・強化、再生可能エネルギーと原子力の最大限活用を掲げている。本稿は、二つの危機対応と一つの構造対応からなる三つの政策により、同計画におけるエネルギー安全保障の実効性を高めることを提言する。 危機対応①「調達先・輸送経路の多角化と備蓄の実効性」 中東内の迂回経路と、米国等の中東域外からの調達を組み合わせる。石油元売・商社は、商業性と製油所との適合性を踏まえて複数経路の取引を平時から維持し、政府は日米協議、政策金融及び共同備蓄を通じてこれを支援する。日韓協力とPOWERR Asiaも、アジア地域の調達・備蓄能力の強化に活用する。 危機対応②「川下の供給支障に備える平時の連携体制」 危機時に重要物資タスクフォースが担った情報収集と省庁横断の調整機能を、平時の体制に組み込む。個別の供給支障は所管省庁、共通原料の不足が複数分野に波及する場合は経済産業省、省庁間の優先順位に関わる場合は内閣官房が調整する。供給不足が深刻化した場合には備蓄放出等を検討し、法定要件を満たす場合に使用節減措置へ移行する。 構造対応「原子力産業・人材基盤の維持・強化」 輸入化石燃料への依存を中長期的に低減するため、日米の戦略的投資イニシアティブを活用する。日本政府は日米の協議委員会を通じて日本企業の参画を働きかけ、海外規格への対応と米国の供給網への参入を支援する。そこで得られる設計・製造の経験を国内に蓄積し、将来の次世代革新炉の開発・設置へ引き継ぐ。 三つの政策を異なる時間軸で一体的に進め、平時の調達、危機時の国内供給及び中長期の国内供給力を強化することで、わが国のエネルギー安全保障の実効性を高める。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)