ビューポイント No.2026-009 インフレ時代の負担のあり方再考 ―勤労性所得に依存した社会保険料による再分配の弊害が増大― 2026年05月26日 成瀬道紀物価高に苦しむ勤労低所得層への支援が必要として、給付付き税額控除や食料品消費減税が議論されている。もっとも、財源の裏付けなき給付や減税は、通貨への信用を毀損し、インフレ高進を助長する懸念が強い。求められるのはバラマキではなく、インフレ経済への構造転換を踏まえた再分配のあり方の再構築である。新型コロナ禍後のインフレ下、労働分配率の低下を受けて、実質賃金は低下している。所得階層別にみると、中高所得の家計において勤労性所得の実質的な減少が目立つ。一方、株や不動産などの資産価格は急上昇し、リスク資産を豊富に持つ家計は大きな恩恵を享受してきた。純資産額が上位1%の家計は、2024年の1年間に平均約2,800万円のキャピタルゲイン(値上がり益)を得たと推計される。そもそも、公平な課税所得の概念としてヘイグ・サイモンズの包括的所得が知られており、キャピタルゲインも包括的所得に含まれる。新型コロナ禍後の資産価格の大幅な上昇を受けて、包括的所得に占める資産性所得の比率が上昇する一方、勤労性所得の比率が低下している。こうしたなか、もっぱら勤労性所得に課される社会保険料を再分配に多用するというわが国の悪しき習慣の弊害が増大し、再分配の不公平さはもはや看過できない状態にある。社会保険料は、負担と受益の対応を前提としたものであり、再分配には適さない。ところが、わが国では国民受けの悪い増税を回避するために、本来税で行うべき再分配まで社会保険料がなし崩し的に用いられてきた。具体的には、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、介護納付金、子ども・子育て支援金などが挙げられ、これだけで合計年間約15兆円に達する。このような負担と受益が対応しない再分配の財源は、社会保険料から税へのシフトが求められる。増税の候補としては、もちろん資産所得課税も挙げられるが、十分な規模の安定財源としては、消費増税が不可欠である。もっぱら勤労性所得に課される社会保険料から、勤労性所得と資産性所得の双方に隔たりなく課される消費税へのシフトにより、再分配の公平性が高まると期待される。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)