RIM 環太平洋ビジネス情報 2001年4月Vol.1,No.1
地域内統合を迎えるインドネシアの産業競争力の現状と課題
2001年04月01日 三島一夫
要約
輸出指向型工業化への政策転換と規制緩和の結果、インドネシアは1990年代に目覚しい工業化を実現したものの、インドネシアの製造は製品輸出の競争力の低下、重工業分野における輸入依存度の高さ、技術蓄積の遅れなどの構造的問題を抱えている。ASEAN自由貿易地域(AFTA)など域内経済統合が進展するなかでインドネシアは、マレーシア、タイなど先進ASEAN諸国に技術面でキャッチアップする必要に迫られると同時に、コスト面で中国、ベトナムなど新興国に対する競争が激化するという二つの問題に直面している。
インドネシアはASEAN域内における工業化の進展度では、フィリピン、ベトナムと同じレベルにある。産業構成ではタイ、フィリピンと類似しており、軽工業の比率が大きい。域内での相互補完という面では、インドネシアは豊富な天然資源を背景に資源加工型産業に強みを持つ一方で、技術蓄積が要求される機械産業は劣位にある。輸出競争力の推移を貿易特化係数でみると、インドネシアは原材加工品の輸出競争力は高いものの、機械類の輸出競争力の向上ではタイ、マレーシアからはるかに遅れている。AFTAの実現にともなって域内の相互補完関係が強化される方向に向かっており、多国籍企業は域内生産拠点の拡張と統合を加速させている。ASEAN各国における技術蓄積と労働コストを考慮すると、域内統合に関連した外資誘致で最も強みを発揮するのはタイだと考えられる。しかし、安価で豊富な労働力を有していることから、インドネシアも新規投資や既存生産拠点の拡張を通じて産業集積が進展する可能性を有している。
一方、労働集約型製品において国際市場で競合する中国と比較すると、インドネシアのコスト競争力は、通貨危機によるルピア相場の下落によって回復したものの、付加価値額対比では中国を下回っている。従業員一人あたり付加価値額でみる生産性では、インドネシアの競争力はアパレル、皮革製品、家具、電気電子などの分野で中国を大きく下回っている。電気電子をはじめとする機械類の分野では技術蓄積面でも遅れがみられ、他のASEAN諸国からローエンド品(低価格品)の生産移管を誘致していくうえでも中国との競合は厳しくなっている。また、国内市場においても価格面では中国からの輸入品に対して競争力を失なっており、工作機械や農業機械などの機械類だけでなく家電製品、オートバイなどの消費財も中国製品が大量に流入している。
以上の状況のなかで、インドネシアが取り組むべき課題は、(1)投資環境の改善による外資の積極的誘致と(2)産業構造改革を通じた競争力強化の2点である。外資誘致面では、投資優遇措置の新設、自由貿易地域(FTZ)の設置などによって投資環境を改善すると同時に、シンガポール、マレーシアなど近隣 ASEAN諸国との地域共同開発を促進していくことが優先課題となる。また産業構造改革面では、競争原理の導入によってクローニズム・メカニズムを排除したうえで、国全体で産業構造改革に取り組んでいくことによって、サポーティング産業の育成、中小企業育成、技術水準の向上、人材育成などの目標を達成し、産業競争力を高めていくことが要請される。

