RIM 環太平洋ビジネス情報 2001年4月Vol.1,No.1
アジアにおける銀行再編
2001年04月01日 高安健一
要約
1990年代に入り、金融機関の整理・統合が、先進工業国のみならず新興成長地域においても大きな潮流となっている。本稿で取り上げるアジア6カ国(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、シンガポール、韓国)においても、経済の発展段階、金融システムの形成過程、不良債権問題の処理状況などが異なるにもかかわらず、通貨・金融危機を一つの契機として、銀行の整理・統合が急速に進展している。これは、大きな痛手を被った銀行セクターの再建と、来るべき競争時代に耐えうる強固な金融機関の育成という、2つの側面を持つ。
各国の動向は、次のとおりである。タイでは、金融再編の主役は外国金融機関であり、国有商業銀行の民営化と地場民間商業銀行の収益力強化が急務となっている。マレーシアでは、政府主導で金融機関が10グループに集約されつつあるが、これをもって金融再編が終了するとは考え難い。フィリピンでは、政治・経済情勢が不透明な中で、上位行同士の経営統合の真価が問われている。インドネシアでは、政府主導で多額の財政資金を投入しながら、銀行の資本増強と整理・統合を促す展開が今後も続くことになろう。シンガポールでは、政府の意向に反して、地場有力銀行同士の合併観測は後退しているが、各行は競争力向上に向けた手を着々と打っている。韓国では、これまでのところ、銀行再建プログラムの第2段階が政府のシナリオ通りに進展している。健全行同士の合併と、金融持ち株会社制度を活用した公的資金注入行の再編などを通じて、メガ・バンクやユニバーサル・バンクが登場することが期待されている。
アジアでもメガ・バンクが21世紀初頭の金融市場をリードすることになる。そして、次第にユニバーサル・バンクとしての色彩を強め、多様な金融商品を提供する体制を整え、経営環境の変化に対応した事業のリストラクチャリングを継続的に実施していくことになろう。だが、世界的には規模が小さいことは否めず、独力で手掛けることができない分野については、外国金融機関との提携を模索することになろう。
効率的で強固な金融システムを構築するには、金融インフラと金融制度の整備や、金融監督当局の技量の向上だけでは不十分であり、経営基盤の優れた民間銀行の育成が欠かせないとの認識がアジアでも広まっているように思える。また、金融当局は、外国金融機関の国内進出をどのようにして金融システムの安定性と効率性の向上に役立てるかという課題にも直面している。
邦銀がアジア有力銀行との提携を模索するには、アジアの金融再編が大規模かつ急速に進んでいるとの認識に基づき、そうした銀行の機動的な業務のリストラクチャリング(=先方のニーズ)を的確にフォローしていくことが必須条件になる。

