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RIM 環太平洋ビジネス情報 2001年7月Vol.1,No.2

90年代における韓国の対外経済関係の変化

2001年07月01日 向山英彦


要約

90年代における韓国の輸出構造の変化としては、地域別構成の変化と輸出品目の高度化がある。80年代後半からアジア向け輸出が大きく伸びたが、90年代後半にアメリカと日本向け輸出の構成比が上昇に転じ、アジア向け輸出の構成比が低下した。この要因には、アメリカの景気拡大と通貨危機後のアジア経済の後退がある。輸出品目面では、ITの占める比率が上昇した。アメリカ向けを中心にしたIT製品の輸出拡大が韓国の景気急回復をもたらしたが、2000年後半からアメリカ経済の急減速を契機に、韓国の輸出も鈍化している。

長期的な視点で韓国の輸出構造の変化をみると、中国との貿易関係が緊密化していることが確認できる。中国はアメリカ、日本につぐ3番目の貿易相手国となっており、韓国と中国との貿易構造も、かつての垂直分業から水平分業へと変化してきている。この背景には、韓国から中国への生産シフトがある。

90年代におけるもう一つの大きな変化としては、韓国への外国直接投資の増加がある。この背景には、外資規制の大幅緩和、韓国企業のリストラ、ウォン安による資産価値の減価、国内市場の大きさなどがある。地域別の投資をみると、欧米系企業の投資が多い。欧米系企業の進出は、韓国の市場構造やビジネススタイルを大きく変えている。

韓国と日本の貿易関係をみると、依然として貿易不均衡が問題となっている。この要因としては、韓国では高品質の生産財の日本への依存度が高いことがあげられる。両国における産業基盤の充実度の違いは、国際産業連関表からも確認できる。また最近の対日貿易赤字の拡大には、99年6月の輸入先多角化品目制度撤廃による影響もある。

こうした一方、韓国の日本との経済関係にも、新たな動きがみられる。90年代を通じて、水平分業が進んだことと、相互の投資や企業提携の動きが、近年活発化する傾向にあることである。現在、両国で自由貿易締結に向けた動きが始まっているが、韓国にとっては短期的には対日貿易収支が悪化するものの、長期的には大きなメリットを受けると予想される。

東アジア地域において韓国、中国、日本との間で連携(枠組み作りと実体面での繋がり)が強まっていくと予想される一方、通商面や安全保障問題をめぐっての摩擦も予想される。相互の信頼と持続的成長に向けての枠組み作りがこれからの課題となろう。
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