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RIM 環太平洋ビジネス情報 2001年10月号Vol.1,No.3

金融再編、銀行統合に動く台湾

2001年10月01日 小林重雄


要約

台湾では昨年から今年にかけて、金融機関の合併や金融持ち株会社設立、不良債権処理、問題ある金融機関の整理を図る台湾版整理回収機構設置などに関連した法令が制定された。この中で注目されるのは、外国銀行、外資の参入を奨励している点である。

現在、台湾では市場規模に比べて銀行の数が多過ぎ、経営不振に陥っているものも散見される。不良債権は年々増加しており、特に信用合作社、農協、漁協など小規模金融機関の不良債権比率が高く、放置できない事態にまでなっている。政治面で国際孤立の道を歩む台湾にとって経済は生命線であるが、産業、企業に資金を供給する役割を担う金融機関が弱体であれば、経済立国自体が立ち行かなくなる恐れがある。これはWTO加盟を控えて早急に解決を迫られた課題になってきている。このため、当局は金融再編を急ぎ、大規模で強い銀行の育成に着手し始めた。

台湾の主要銀行は、元来日本資本と台湾資本の合弁で設立され、金融システムは日本から導入された。第2次大戦後、中華民国政府によって国有化され、また中国から渡台した銀行、政策的に設立された銀行が並存したが、大半が国営であった。80年代後半から経済急成長と民主化、台湾化の進展に伴い銀行民営化要求の世論が強まってきたため、当局は民営銀行の設立を解禁するとともに、90年代後半からは既存大手銀行の民営化を推進した。こうしてほとんどの銀行が民営となったが、小規模なものが多いのが実情である。

当局は銀行の合併、グループ化などを進めて競争力のある銀行を育成する方針である。これが結局は不良債権の増加を抑え、金融再編をスムーズにさせるとみている。競争力のある銀行となるための市場開拓力、企画力などは、新民営銀行の幾つかがこれまでに具備している実例をみせてきているため、今後は合併、グループ化などの大規模化によって、強い競争力のある銀行を育成できると見通している。

台湾金融市場をみると、地場企業取引が主体であるが、他国と比べC/P、B/A市場が発達しているという特色がある。また地場銀行の中には、党や特定の集団と密接な関係を有したものや地域性の強いものなどが多いため、事業展開するうえでも、あるいは地場銀行の買収交渉などをするうえでも、事前の充分な概況観察や歴史学習が必要であろう。また地理的にも歴史的にも日本との関係が深いため、邦銀の市場開拓余地はある。

当局は銀行の合併、グループ化などを進めて競争力のある銀行を育成する方針である。これが結局は不良債権の増加を抑え、金融再編をスムーズにさせるとみている。競争力のある銀行となるための市場開拓力、企画力などは、新民営銀行の幾つかがこれまでに具備している実例をみせてきているため、今後は合併、グループ化などの大規模化によって、強い競争力のある銀行を育成できると見通している。

台湾の金融再編、銀行統合などの金融改革は、戦後続いてきた国府体制を現実に則したものに改めていく政治改革の流れの一環でもあるため、他国とは異なった困難さもあり時間もかかる。外銀、外資の参入を図り、金融改革を進め易くするためには、なお煩雑な感のある行政組織や手続きの簡素化など行政改革も必要になってくるであろう。
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