RIM 環太平洋ビジネス情報 2001年10月Vol.1,No.3
エレクトロニクス産業のアジア展開に関する日米企業比較
アジアとの補完性が問われる日本企業
2001年10月01日 竹内順子
要約
アジアのエレクトロニクス産業の成長は外資系企業、とりわけ日米企業の直接投資に大きく影響されてきた。日本企業は1960年代の民生用機器の現地供給を目的とする投資から出発し、80年代半ば以降はアジアからの輸出を目的に、大量の投資を行った。一方、米国企業は70年代以来、半導体、情報機器関連の本国への逆輸入を目的とする投資を中心に行ってきた。
90年代に入り、エレクトロニクス企業の海外直接投資に占めるアジアの割合は日米ともに比重を高めている。そのなかで、米国企業が逆輸入の割合を相対的に縮小させ、現地販売を強化しているのに対して、日本企業は逆輸入を加速度的に増大させている。その結果、逆輸入の貿易収支に与える影響が増大するとともに、アジアでの生産拡大が国内の生産縮小に結びつく構造も鮮明になっている。
米国は、逆輸入も含めた海外調達の経験が長く、半導体にしても、情報機器にしても貿易赤字が定着して久しい。80年代半ばには、それが米国産業の競争力喪失を示すものとして憂慮されたが、企業ベースでは高収益の製品、機能への特化が進められ、90年代の好況につながった。高収益プロセスへの特化の過程で、製造機能の外部化、アジア企業への依存の拡大を通じてアジアとの補完性が強まり、アジアのエレクトロニクス産業の成長から米国企業が受けるメリットは増大した。
2000年10~12月期以来の情報・通信機器市場の世界的な落ち込みによって、日本企業は待ったなしの事業再構築を迫られており、事業選別と生産体制合理化のなかで、アジアにおける事業の位置付けも問われている。再構築において求められるのは、(1)外部資源の活用、(2)集約のメリットとリスク分散のバランス、(3)現地マーケット開拓の視点であるが、中長期的な成長分野とのシナジー効果も考慮する必要がある。その前提となるのは、自社の得意分野からどのような将来像を描いていくかという戦略である。

