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RIM 環太平洋ビジネス情報 2002年10月Vol.2 No.7

90年代における韓国、台湾の産業・投入産出構造の変化
グローバル化の進展で変わる構造

2002年10月01日 向山英彦


要約

  1. 経済がグローバル化するなかで、産業構造の違いが経済パフォーマンスの違いの一因となってきている。本稿では、主に韓国と台湾を取り上げて、90年代に、産業構造および投入産出構造がどのように変化したのかを検討していく。

  2. 産業別GDP構成比をみると、韓国では80年から2000年にかけて、農業が10ポイント以上低下した一方、工業が1ポイント、サービス業が9ポイント上昇した。他方台湾では、同期間に農業が5ポイント、工業が13ポイント以上低下するなか、サービス業が19ポイント上昇し、経済のサービス化が急速に進んだ。

  3. 経済のグローバル化の進展に伴い、産業構造は「国際分業型」へと変化していく。こうしたなか、企業の海外調達も増加することから、投入産出構造において国産財の投入率が低下する傾向がみられる。

  4. 韓国と台湾の製造業の生産額を比較すると、輸送機器と一般機械産業のウエートが大きく異なることがわかる。韓国では自動車や造船産業が輸出産業として成長した結果、輸送機器の製造業の生産額における構成比は20.5%(99年)であるのに対して、台湾では7.5%(96年)である。一般機械産業の構成比は、韓国では9.1%、台湾では4.6%である。他方、台湾では電子・電機機械産業への傾斜が強い。

  5. 産業連関分析より明らかになった90年代の韓国経済の変化としては、1)電機・電子産業では生産構成比は上昇したが、影響力係数は平均以下となったこと、2)輸送機器産業では生産構成比は若干低下したが、影響力係数は上昇したこと、3)繊維/織物/衣服産業では生産構成比は大きく低下したものの、影響力係数は平均以上であること、4)金融/不動産/その他サービス産業は感応度係数が高く、90年代を通じて著しい成長をとげたこと、などがある。

  6. 他方、90年代における台湾経済の変化としては、1)生産面では電機・電子機械産業の構成比は大きく上昇したが、影響力係数は低下したこと、2)一般機械産業では生産構成比は変化しなかったが、影響力係数は大きく低下したこと、3)金融・保険/不動産などのサービス産業の生産構成比が上昇し、感応度係数も高水準にあること、などである。

  7. 台湾経済は生産および輸出品目構成において、ITを含む電機・電子産業への傾斜を強めた結果、IT需要の変動を受けやすくなった。しかも、電機・電子産業は生産に占める割合が最も高い半面、その生産波及効果は産業の平均以下であるために、雇用創出の面で、新たな産業育成やサービス産業のさらなる発展が課題となる。

  8. 台湾と比較して、韓国の産業構造は多様化しており、このことが経済の安定に寄与している。韓国では産業構造よりは産業組織が問題であったことが、通貨危機によって示された。通貨危機後、財閥改革が推進される一方、外資の進出もあり、産業組織の改革も進んでいる。
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