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RIM 環太平洋ビジネス情報 2003年10月Vol.3 No.11

途上国における生物資源アクセス規制の強化と先進国の対応

2003年10月01日 環太平洋研究センター 渡辺幹彦


要約

  1. バイオインダストリーにとって不可欠な「資源」である生物資源を確保する活動を生物資源アクセスという。先進国は、生物資源が豊かな途上国において生物資源アクセスを行う必要がある。例えば、イギリスの製薬企業グラクソ社は、マーライオン・ファーマシューティカル社をシンガポールに設立し、近隣のアジア諸国での生物資源のアクセスを行った。

  2. 生物資源は、「生物多様性条約(CBD)」によって管轄されている。CBDは、生物資源アクセスの当事者はアクセス内容について事前に合意して、そこから得られる利益を公平に配分しなければならないと規定している。しかしながら、CBDには、公平性の基準が具体的に示されていないために、生物資源アクセスが促進されなかった。この状況を改善するために、2002年に、生物資源アクセスが公平とみなされるような手続きなどを定めた「ボン・ガイドライン」が採択された。また、同ガイドラインを参考に、生物資源アクセスに関する法的拘束力を伴った「国際制度」を採択するか否かについて交渉が行われている。

  3. 先進国による生物資源アクセスの試みをいくつか挙げると、まず、欧州の大手製薬会社は、自主的なガイドラインを策定して生物資源アクセスを行ってきた。アメリカは、援助プログラムと組み合わせて、生物資源アクセスを実施してきた。日本は、藤沢薬品工業がマレーシアの現地企業を通じて生物資源アクセスを行っているのに加えて、製品評価技術基盤機構(NITE)の生物資源センター(NBRC)が、インドネシアと微生物資源のアクセス契約を締結した。

  4. 途上国において、生物資源アクセスの規制を強化する動きがある。地域による規制の代表例として、「ASEANフレームワーク協定(案)」、「アンデス共同体391号決定」、「アフリカ統一機構(OAU)モデル法」などがある。国別の規制として、例えばアジアでは、フィリピンとインドに生物資源アクセスに関する国内法がある。これらの規制の特徴は、a.生物資源アクセス当事者間での事前合意文書の作成の義務、b.利益配分に関する文書作成の義務、c.管轄する当局機関の設立や任命、d.生物資源に関する知的財産権の制限などである。

  5. 日本は、ASEANフレームワーク協定の策定に対して、a.NBRCを通じてのインドネシアにおける生物資源アクセスの促進と生物資源アクセス関連法案への提案、b.バイオテクノロジーに関する技術移転の促進、c.効率的な参加型手法の技術援助などにより、同協定が効率的な生物資源アクセスをもたらすような制度となるような働きかけを行うことが必要である。
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