RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.100
OECDとBRICS への加盟を目指すASEAN 諸国の思惑
2026年09月14日 熊谷章太郎
新興国の台頭、米中対立の常態化、アメリカの自国第一主義の強まり、などを背景に、国際経済秩序は転換期を迎えている。国際機関の機能不全が表面化するなか、アメリカ以外の先進国は、国連やWTOの改革やOECDと新興国の連携強化を通じて既存の国際経済秩序を維持・強化しようとしている。他方、中国とロシアが主導するBRICSが独自の決済システムの構築や加盟国拡大に向けた取り組みを加速するなど、新たな国際経済秩序を目指す動きも見られる。世界が多極化に向かう様相を呈するなか、ASEAN諸国は基本的な理念が大きく異なるOECDとBRICSの双方に加盟することを目指す独自の外交を展開しており、その動向が注目を集めている。
ASEAN諸国がOECD加盟を目指す背景としては、2020年代に入り経済・財政状況が悪化していることを指摘できる。不安定な政治・社会情勢が続くASEAN諸国は、OECD加盟という国際的な公約を戦略的な外圧として利用し、国内の政治的なしがらみや既得権益層の抵抗などを打破して構造改革を断行することを目指している。それにより、投資先としての対外信用力を高め、産業高度化に必要な外資誘致や、国債格付けの引き上げを通じた財政安定性の向上などを図ろうとしている。ただし、OECD加盟はあくまで各国の自主的な動きであり、国内に向けて外圧としてどこまで機能するかは定かではない。各国において、既得権益層の反発が予想される外資規制の緩和や国有企業改革、実効性を伴う汚職対策の推進は容易ではないと見ておく必要がある。
他方、BRICSへの加盟について見ると、現時点ではBRICSが国際経済秩序に与える影響力は限られており、同枠組みに参加する短期的な実利は少ない。それにもかかわらずASEAN諸国がBRICS加盟を目指す理由としては、①先進国に対する交渉力の引き上げ、②BRICS内の産官学の会合などへの参加を通じた他の加盟国との経済関係の緊密化、③BRICSが構築しようとする経済システムが将来大きな影響力を有する際のリスクヘッジ、などを挙げられる。ただし、BRICSへの加盟は、①ドル基軸体制の揺らぎや先端技術の情報流出を懸念するアメリカとの関係悪化、②中国の影響力が強いBRICSの経済ルールへの準拠に伴う対中依存度の上昇、③OECDとBRICSという理念を異にする両陣営に近づくダブルスタンダードがもたらす国際投資家の信認低下、などの経路から経済を悪化させるリスクを抱えていることには留意が必要である。
こうした状況を踏まえると、日本は他国と連携しながらASEAN諸国のOECD加盟に必要な制度改革支援を強化しつつ、ASEAN諸国のBRICS加盟に伴う地政学的リスクや制度の整合性確保についても戦略的な政策協議を重ねていくべきである。
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