RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.100 習近平政権が第15次5カ年計画で目指す中国の国家像 ―強国化路線の実現性と課題― 2026年09月14日 佐野淳也2017年の第19回共産党大会において、習近平総書記は、建国100周年の2049年に中国が総合国力と対外影響力で世界一の強国になることを最終目標とする長期国家戦略を発表した。この目標の達成に向け、中国にとって最も重要な中期計画とされる5カ年計画では、期間中の経済・社会の運営方針や目標などが示されるようになった。習近平政権下では、第13次(2016 ~ 2020年)、第14次(2021 ~ 2025年)、そして最新の第15次(2026 ~ 2030年)と、三つの5カ年計画が策定された。2035年や2049年のゴールに注目すると、第15次5カ年計画は、第14次5カ年計画で描かれたロードマップに沿って進むとともに、目標の要求水準が高くなっている。第15次5カ年計画は、2021年から2035年までの15年間を三つの5カ年計画に分け、3段階で強国化の中間目標を達成するという構想の下、第14次と第16次をつなぐ役割を担っている。第15次5カ年計画では、様々な分野で強国を目指す方針だが、習近平政権が最も重視しているのが製造強国である。実際、同計画に掲載された約100件の重点プロジェクトのうち、AIを活用した製造業の高度化や高品質高温合金や先端高分子材料といったハイエンド新素材など、「新質生産力の発展」関連が28件と最も多い。製造強国の実現に向けて、科学技術力の強化も加速させようとしている。内需拡大・マクロ経済ガバナンスの強化では、消費マインドの喚起と、労働生産性に関する質向上の二つを重視したことが指摘できる。政治面では、党中央による指導を徹底化し、指示通りに動かない地方幹部を更迭する方針が盛り込まれた。外交面においては、「中国の特色ある大国外交」への転換を打ち出し、対外影響力の積極的な拡大、国際社会での大国としての役割を重視する方針を示した。また、短期的には強国化路線にブレーキをかけることになっても、持続的発展に向けて、環境に配慮した生活様式への転換を進めようとしている。第15次5カ年計画は、総じて計画通りに進展すると予想されるが、進捗状況にはばらつきがみられることになろう。製造強国、共産党の指導、対外影響力などはおおむね順調に進みそうだが、内需拡大や教育、環境関連は一部で遅れが生じる可能性がある。とりわけ内需拡大では、財政規律や供給サイドを重視する方針であることから、消費マインドの改善が思うように進まず、需要と供給の不均衡がむしろ拡大する可能性がある。次期第16次5カ年計画は、2035年に設定した強国化目標の達成に向けた総仕上げになるとみられる。第15次5カ年計画で計画通り進展した目標の一段の推進、計画通りに進まなかった目標の再評価が行われ、産業政策、消費マインドの改善、人材育成の3分野に重点が置かれよう。中国共産党・政府は、トップダウンによる資源配分を通じて計画可能な政策を確実に遂行する能力は高い半面、需要に働きかける政策はかねてより不得手であり、バランスを欠いた経済成長モデルの修正に苦しみ続けることになるであろう。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)