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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.99

タイ経済を脅かす輸出競争力の低下と周辺国リスクの高まり

2026年05月11日 熊谷章太郎


タイ経済は内憂外患の状況が続いている。内需を取り巻く環境を見ると、不安定な政治情勢が続くなか、家計債務問題、少子化問題、財政問題などの解決に必要な各種構造改革は停滞している。内需の低迷が長期化すると見込まれる状況下、タイが持続的な経済成長を遂げるには、世界的に保護主義が広がるなかでもグローバル化を推進し続ける必要がある。その一方、トランプ関税、競合国の台頭、周辺国リスクの高まりなどを受けて、輸出と投資を取り巻く不確実性は高まっている。先行きを展望する際には、これら不確実性がタイ経済に及ぼす影響をおさえておくことが重要である。

トランプ関税は、これまでのところ、エレクトロニクス製品を中心に中国のアメリカ向け輸出品の代替を通じて、タイ経済をむしろ押し上げている。ただし、今後、アメリカがタイに対する関税を一段と引き上げ、それにより輸出と対内直接投資がともに悪化するリスクには注意が必要である。タイは、トランプ関税の撤回を促すべく、関税・非関税障壁の削減などを通じてアメリカに対する貿易黒字を縮小する方針を示したが、中国の輸出の代替によって貿易黒字は拡大し続けている。

仮に、アメリカの政策変更に起因する輸出悪化を回避できたとしても、先行きは楽観できない。インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドなど、エレクトロニクス製品の輸出でタイと競合する国のビジネス環境の改善や、それらの国内消費市場の発展を踏まえると、タイの輸出やそれに関連した直接投資の行き先が競合国にとって替わられる可能性がある。また、他のアジア新興国の農業生産性の改善を受けて、コメや天然ゴムなど、タイの主要農作物の輸出競争力も低下しつつある。

さらに、これまでタイ経済の追い風となっていた周辺国の政治・経済環境も、その変化により、足元ではタイ経済に下振れリスクをもたらしている。当面、留意すべき周辺国リスクとしては、①ミャンマーからの天然ガスとラオスからの電力輸入の不安定化、②出稼ぎ労働者の急減に伴う人手不足の深刻化、③越境犯罪の増加に伴う経済活動の健全性の低下や治安維持コストの増加などが挙げられる。

タイが一連の「向かい風」を乗り越えるためには、輸送機械、エレクトロニクス製品、バイオマスベースの製品を中心に製品の高付加価値化を進め、輸出競争力を高める必要がある。また、再生可能エネルギーの導入やデジタル化を通じた省エネ・省力化により、周辺国リスクを低減することも重要である。タイ政府の経済政策の方向性はおおむね妥当と判断されるが、その実行ペースをいかにして加速させるかが最大の課題である。国内の政治動向や財政状況を勘案すると、これまでよりも注力分野を絞って支援を拡充するなどの政策修正を迫られるだろう。


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