RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.98
ASEAN・インドの半導体産業の現状と競合・補完関係
2026年01月23日 熊谷章太郎
半導体産業の再編を主導するアメリカは、第2次トランプ政権の発足後、西側諸国や新興国との連携強化を通じた生産拠点の分散よりも、アメリカへの生産移転を重視する姿勢を明確化している。しかし、アメリカの高コスト体質、半導体人材の不足、通商政策の一貫性を巡る不透明感などを踏まえると、半導体のグローバルサプライチェーンで重要な役割を担っている東アジアの製造機能をアメリカが代替することは困難である。そのため、半導体産業に占める東アジアの重要な役割は今後も続くと同時に、地政学リスクに対応するためにASEANやインドにサプライチェーンを分散する動きが続くと見込まれる。したがって、先行きを展望する際には、これらの国・地域の半導体産業の発展動向や競合・補完関係を把握しておくことが重要である。
ASEANの半導体産業は、良好なビジネス環境を有するシンガポールと、後工程に比較優位を有するマレーシアに集中している。しかし、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムも半導体産業の発展に向けて、投資誘致や人材育成に向けた取り組みを強化しており、将来は旧世代の半導体の後工程や設計を中心に、生産拠点は多様化していくと見込まれる。ただし、政情不安定化や財政悪化がソフト・ハードインフラの整備の遅れを通じて、一部の国の産業発展を制約する可能性には留意が必要である。
インドは、設計に比較優位を有しているが、近年は製造分野の発展に注力している。物流・エネルギーインフラが整備途上にあるため、大手半導体企業はインド進出に慎重な姿勢で臨んでいるが、手厚い政府補助金が呼び水となって前工程を含む複数の製造計画が打ち出されている。米印関係の悪化が半導体産業の発展を阻害するリスクが高まるなか、インド政府は同産業の発展に向けて、日本、韓国、台湾、欧州などとの半導体関連のパートナーシップの強化や補助金制度の拡充を目指すと見込まれる。
ASEAN諸国とインドは、大手半導体企業の誘致を巡って競合関係にある。しかし、ビジネス環境の違いに応じて各国が比較優位を有する事業領域が異なることや、半導体産業は裾野の広い産業であり、原材料や製造装置を一国で全て内製化することは困難であることを踏まえると、各国の半導体産業が発展する中で補完関係も深まっていくと見込まれる。アメリカが求心力を失うなか、原材料や製造装置に競争力を有する日本は、ASEAN・インドにおける半導体関連の二国間・多国間の協力の枠組みに積極的に関与し、効率的なサプライチェーンの形成に貢献していくことが期待される。
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