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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.98

中国・習近平政権の経済政策決定プロセス

2026年01月23日 佐野淳也


中国では1980年代以降、毛沢東氏による個人独裁の弊害を教訓に、幹部の終身制の廃止、党や軍の権力のトップを分散させる人事などが、鄧小平氏主導で実施された。こうして生まれた集団指導体制は、江沢民・胡錦濤政権下で、任期制と交代制度、後継者育成システムの確立・定着が一段と進んだ。

集団指導体制は、多様な意見を踏まえた政策の決定が可能になるなどのメリットはあったものの、迅速な決断が困難、汚職のまん延、地方政府の面従腹背といったデメリットも表面化した。中国を取り巻く安全保障環境の変化、所得・資産格差の拡大とそれに伴う国民の不満の高まりもあって、習近平政権は、国家主席の任期撤廃や総書記の権限強化などを通じて、再び一強体制へとかじを切った。

共産党指導部が集団指導体制から一強体制へ転換するのに連動して、経済政策決定プロセスも合議制からトップダウン方式に変化した。共産党内に、①中央全面深化改革委員会、②中央財経委員会、③中央金融委員会、④中央金融工作委員会、といった四つの委員会が設置され、習近平総書記のトップダウンによる決定をサポートするようになった。それとともに、経済政策決定プロセスにおける中央政府および総理の地位は低下した。

トップダウン方式の経済政策決定は当初の期待通り、政策の大胆な転換や地方政府のコントロール強化が可能になった。また、産業政策でも、企業・業界をコントロールするための強力な措置を打ち出せるようになった。

一方、マイナス面も顕在化した。まず、習近平総書記の提唱する「総体的国家安全観」に直結しない経済政策の優先度が低下し、一部の経済政策の決定はむしろ遅れるようになった。また、習近平総書記の考えをそん度するあまり、共産党指導部内で多様な意見が出にくくなり、習近平総書記の意向に沿わない内容の政策決定と軌道修正が困難になった。さらに、習近平総書記の指示が拡大解釈され、時には政権が想定しなかった混乱を招いた。

習近平政権は、トップダウン型で迅速・大胆な政策を打ち出すことができる現状を最適と考えているとみられ、経済政策においてもトップダウン型が継続される可能性が高い。そのため、日本企業は想定外の政策を除外することなく、様々なリスクシナリオを用意しておく必要がある。さらに、習近平総書記がどのような経済問題を総体的国家安全観にとって重要ととらえているかを理解するため、習近平総書記個人の発言に対する定点観測の強化も必要であろう。


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