コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

リサーチ・フォーカス No.2026-062

中国のEV産業はどのように競争力を高めたか~「動的な産業育成メカニズム」の視点から~

2026年11月02日 王婷


中国では、EVをはじめとする戦略的新興産業の競争力が高まっている。その背景には、巨大な国内市場や政府による大規模な支援、実証環境の提供だけではなく、産業の成長に応じて政府が政策の役割を変え、市場競争を活用してきたことがある。市場が未成熟な段階では、政府が需要を創出して企業の参入を促し、市場の成長に伴って企業間の競争を促してきた。

本稿では、こうした仕組みを「動的な産業育成メカニズム」と捉える。その特徴は、①市場の形成、②競争を促す政策の設定、③競争の結果を踏まえた政策の見直し、という循環にある。中国のEV産業では、導入初期に政府が公共調達や補助金によって需要を創出した後、補助金を段階的に縮小し、企業間の競争を促した。そのなかで、BYDやCATLなどが技術力やコスト競争力を高めて有力企業に成長した。政府も市場で明らかになった技術面の課題などを踏まえて政策要件を修正し、より安全性や効率性を重視する技術開発を促した。こうした政府による政策の調整と企業間競争の組み合わせが、中国EV産業の競争力向上につながった。

一方、こうした仕組みは、過剰投資や過度な価格競争、地方政府による地元企業の保護を通じて、企業の選別を妨げるという副作用も生んだ。とりわけ、過剰投資に起因する生産能力の拡大は、国内の価格競争だけでなく、安値輸出を通じて海外にも価格下押し圧力を及ぼす「デフレの輸出」につながった可能性もある。近年、中国政府は、適切な価格の管理や過剰投資の抑制など政策修正を進めているが、その対応はなお道半ばにある。

市場規模や制度環境が異なる日本にとって、中国の経験から学ぶべきことは、政策支援の規模や個別の政策手段ではなく、産業の発展に応じて政府の役割を変えていく政策運営のあり方である。同時に、中国で生じた副作用も踏まえて、過剰投資や不採算企業の温存を防ぐ視点も欠かせない。立ち上げ期には多様な企業が参入できる市場を形成し、その後は企業間の競争を促す一方、結果を検証して支援策や制度を柔軟に見直す必要がある。とりわけ、成果に乏しい事業への支援を続けて企業や事業の退出・再編を妨げることなく、市場競争による企業や技術の選別が進む環境をつくることが重要である。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)

経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ