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リサーチ・フォーカス No.2026-054

「企業価値担保権」の概要と定着に向けて求められる取り組み

2026年10月14日 谷口栄治


2026年5月、「事業性融資の推進等に関する法律」が施行され、新たな担保制度である「企業価値担保権」がスタート。企業価値担保権は、不動産等の有形資産だけでなく、知的財産、技術力、顧客基盤、ブランド、将来キャッシュフロー等を含む会社の総財産を一体として担保の対象とする制度。

企業価値担保権は、不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、企業の事業実態や将来性に着目した融資を後押しするもの。金融機関と事業者が事業計画や将来見通しを継続的に共有し、経営悪化の兆候を早期に把握して必要な支援を講じることで、デフォルトリスクを抑制し、事業の継続価値を維持することを期待。

主な活用場面として、①スタートアップや中堅・中小企業の成長資金、②事業承継やMBOに伴う借り換え・買収資金、③経営改善や事業再生に必要な資金、などを想定。事業者の資金調達手段が広がるほか、金融機関にとっても、事業者とのコミュニケーションを深め、経営改善、事業承継、M&A等の支援につなげる契機に。

一方、企業価値担保権は、従来の融資実務とは異なる点も多く、制度の定着に向けて、以下の取り組みが重要。
① 制度の周知と活用イメージの共有
制度の概要や活用イメージ、必要な手続き等を分かりやすく伝え、企業価値担保権がどのような案件に適しているか、事業者と金融機関の理解を深めることが必要。
② 金融機関の態勢整備と実務対応
事業性評価を担う人材の育成や部門間の連携を進めるとともに、与信審査、期中管理、信用格付、引当等の実務を整備、高度化することが重要。
③ 事業性評価と企業価値評価を支える基盤の高度化
評価手法の精度を事後検証によって高めるほか、非上場株式市場の整備等を通じ、企業価値や実行時の回収可能性を評価するための情報を充実させる必要あり。
④ 段階的な活用と成果・課題の検証
利用件数の拡大自体を目的とせず、制度に適した案件から段階的に取り組み、そこから得られた成果や課題を検証しながら、実務を継続的に改善することが重要。


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