コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

リサーチ・フォーカス No.2026-051

連続生産で原薬生産の国内回帰を ―技術力を活かし経済安全保障と成長を両立―

2026年09月30日 成瀬道紀


近年政府は経済安全保障への取り組みを強化している。医薬品は国民の健康の維持向上を図るうえで不可欠な物資であるうえ、医薬品の原薬やその原料は海外、とくに中国への依存度が高く、経済安全保障上の重要性が高いといえる。もともと有機合成化学はわが国の得意分野であり1990年代半ば頃まで、わが国は原薬の生産においても高い競争力を有していた。その後、人件費やエネルギーコストなどの費用面や環境面の問題で、コストが低く、環境規制が相対的に緩い中国やインドなどに原薬やその原料の生産がシフトしていった経緯がある。

現在、上述のようなわが国にとって不利な状況を打破し得る技術革新が進んでいる。従来原薬は、「バッチ生産」と呼ばれ、エネルギー使用量や廃棄物の量が大きく人手がかかる方式で生産されていたが、「連続生産」と呼ばれる効率的な生産方式が確立されつつある。わが国は連続生産に関する高い技術力を有し、商用生産に必要な規模の量産も実証済みである。連続生産は、将来的に原薬生産の主流になるとみられ、国内回帰や安定供給確保にも資する技術だが、初期コストや薬事規制上の課題もあり、いまだ普及には至っていない。

経験曲線で知られるように、連続生産のような新技術はビジネスで実際に使われることで進化していく傾向があり、わが国の競争力向上の観点からも、早期の実用化が重要である。連続生産の実用化に向けて、とくに普及初期段階では以下の支援が求められる。一つ目は、原薬メーカーへの連続生産設備導入に係る設備投資補助金である。二つ目は、原薬の変更に係る薬事申請の円滑化に向けた支援である。三つ目は、連続生産による原薬使用への薬価上の優遇である。

原薬の連続生産の実証段階までは経済産業省による支援が中心であったが、実用化に向けては医薬品行政を担う厚生労働省との協力が不可欠である。政府一丸となって、原薬の連続生産の早期実用化を支援し、経済安全保障と経済成長につなげていくことを期待したい。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)

経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ