リサーチ・フォーカス No.2026-035 電子渡航認証制度導入の背景と課題 2026年08月14日 高坂晶子2026 年 5 月、入管法が改正され、わが国に電子渡航認証制度を導入することが決まった。JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)と呼ばれる本制度は、査証免除国から短期滞在のため日本を訪れようとする旅行者に対し、出発前に身元の確認・チェックを行う仕組みで、2028年度中の施行が予定されている。 現状、査証免除国からの短期訪日客は、出発前に特段の手続きをせずとも日本に渡航できるが、JESTA の施行後は、氏名や連絡先、パスポート情報、渡航歴等のオンライン登録を事前に行い、日本政府の認証を得る手続きが必要となる。認証が得られない場合、国際航空・船舶事業者から搭乗を拒否される。 JESTA導入の背景として2点を指摘できる。第1は、厳格かつ効率的な入国審査の実現である。2025 年の外国人入国者総数はコロナ禍前の1.3倍の4,648万人、うち新規入国者が 84%に達しており、入国審査の業務負担が増し、上陸拒否事例も増えている。このため、詳細な事前スクリーニングを導入し、日本で不法行為等を犯すリスクの高い外国人について、水際で入国を防ぐ目的がある。 第2は、活況を呈するインバウンド客の入国審査の円滑化、迅速化である。政府は入国審査の待ち時間20分以内を目標としているが、国際空海港では往々にして長時間の審査待ちが発生している。このため、事前スクリーニングによって対面審査の対象を絞る一方、JESTA 認証者は原則自動化ゲートなどを活用した迅速な手続きを可能とする方針である。 JESTAの裏付けとなる施策をみると、2025年6月公表の「不法滞在者ゼロプラン」、および2026年1月公表の「外国人の受け入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」がある。いずれも、日本のルールや慣行を守る外国人との「秩序ある共生」を推奨する一方、不法滞在や日本の制度の悪用は従来以上に厳格に取り締まる方針である。 今後、政府は海外の先行事例を参考に制度設計を行う見通しである。導入に伴うポイントとして、①正確性や同時性、レジリエンスが強く求められる大規模・複雑なシステムの構築、②個人情報や移動の権利に深くかかわる JESTA システムの安全で安定した運営、③日本への渡航準備に追加的コストが発生するインバウンド、および彼らとビジネスや学術交流等を通じて関係の深い国内関係者にとって使いやすい仕組みの提供、が重要である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)