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リサーチ・フォーカス No.2026-026

社会保障国民会議「年収の壁」対応の加算は要らない

2026年07月23日 西沢和彦


2026年7月13日、社会保障国民会議の実務者会議による「中間とりまとめ(案)」が公表された。柱は、所得に連動した給付制度の2029年導入であり、そこに「年収の壁」対応の加算が盛り込まれている。「年収の壁」とは、一般に、130万円あるいは 106 万円として認識されている。第2号被保険者を配偶者に持つパート主婦(第3号被保険者)が、これらの閾値を超えて収入を得ると一挙に社会保険料負担が発生し、可処分所得が低下する。そのため、就労調整の誘因となっている。加算は、可処分所得の低下を緩和する機能を持つ。

もっとも、「年収の壁」は、26年2月の国民会議発足以前からの問題であり、内容はさておき、既にいくつか対応策が講じられている。その1つが、26年10月から導入される保険料調整制度である。保険料調整制度は、25 年 6 月に成立した年金改正法を根拠としており、小規模企業に勤め、新たに第2号被保険者となる人について、社会保険料の本人負担を最大で半分まで軽減し、やはり可処分所得の低下を緩和する仕組みである。日本年金機構によって運営される。

保険料調整制度は、27年10月から始まる被用者保険適用拡大を円滑に進めるための日本年金機構にとってのいわばツールである。被用者保険適用拡大によって、第3号にとどまったまま働ける時間が減り、パート主婦の労働時間がむしろ短縮しかねない事態も想定されるためである。

他方、保険料調整制度は、社会保険の根幹をなす拠出原則からの逸脱である。本来、頑張って保険料を払うからこそ給付が受けられる。ところが、保険料が軽減されつつ、軽減がなかったものとして給付がなされる保険料調整制度は、拠出原則からの逸脱であり、制度の非対象者からみれば明らかな不公平である。不信は、社会保険制度の存立そのものを揺るがしかねない。厚労省も当然ながらそれを自覚し、期間を3年に限定するなど抑制的な仕組みにしていると思われる。

こうした状況下、保険料調整制度とは別に「年収の壁」対応の加算を設ける合理的根拠は見出しにくい。給付制度の導入の是非も含め根本的に見直すべきであろう。


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