リサーチ・フォーカス No.2026-016 中国が構想する「新型エネルギーシステム」― 変容する国際エネルギー秩序、迫られる日本の対応 2026年06月04日 王婷中国は、第15次5カ年計画において「エネルギー強国建設」を掲げ、「2030年までに新型エネルギーシステムを初歩的に完成させる」との目標を定めた。この「新型エネルギーシステム」とは、再エネ中心の供給構造と高い電化率を持つシステムを主軸とし、化石燃料中心の従来型システムを補完・調整機能に転換させるものである。その核心は、電力を中心に据えつつ、再エネ、蓄電池、AIやデジタル技術を活用し高度な需給調整を行う「技術・システム依存型」エネルギー体系にある。 新型エネルギーシステム構想は、出力変動への対応や送配電網の整備など多くの課題を抱えているものの、将来的な実現可能性は比較的高いと考えられる。その理由として、中国における①豊富な再エネ導入実績と産業基盤の形成、②政府の強い動員力とインフラ整備能力、③AIやデジタル技術の進展による需給調整能力の向上が挙げられる。 このシステムは、資源に乏しい国にとってエネルギー自立を実現する現実的な手段であり、他国での導入が広がる可能性がある。実際、中国の関連企業は、中東、東南アジア、アフリカなどに再エネ関連製品・設備の輸出を拡大しており、多くの地域で中国製品が浸透している。これを踏まえると、中国の構想は国際エネルギー秩序の再編につながる可能性もある。 中国の構想が日本に及ぼす影響として、日本国内では再エネの普及に伴う対中依存の高まり、海外ではエネルギー関連市場における中国企業との競争激化が挙げられる。こうした課題に対して日本に求められる対応は、エネルギー関連の国際供給網のなかで、中国を一律に排除することなく、自らの戦略的位置を構築することである。そのためには、高機能材料、製造装置、制御技術、精密機器などの上流分野で日本の技術優位を一段と強化しつつ、中国企業との競争と協調を適切に組み合わせた柔軟な戦略が求められる。 (全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)