リサーチ・フォーカス No.2025-050 米国の「エネルギードミナンス」が抱えるトリレンマ ― 原油・天然ガスで分かれる明暗、わが国に求められる対応 ― 2025年12月08日 栂野裕貴米国のトランプ政権は「エネルギードミナンス」を実現するため、原油・天然ガスに関する規制緩和などを進めている。エネルギードミナンスとは、①米国のエネルギー生産拡大、②エネルギーコストの低減、③外交的影響力の増大、という3つの政策目標を同時に達成することを目指す考え方である。もっとも、原油・天然ガス分野において、米国がエネルギードミナンスを実現するのは構造的に難しい。原油・天然ガスを生産する企業の採算を加味すると、上記3つの目標を同時に達成することはできない、というトリレンマが生じるためである。トリレンマが生じている状況下、足元の価格動向や今後の価格見通しを踏まえると、米国の原油生産は減少に転じる一方、天然ガス生産は増勢を維持すると予想される。こうした米国の生産動向を見極めたうえで、わが国政府は原油・天然ガスのそれぞれについて、戦略を点検する必要がある。原油分野では、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東産油国との連携を保ちつつ、石油需要を中長期的に抑制していく取り組みを強化することが求められる。天然ガス分野では、米国産LNGの調達拡大など、米国とのさらなる連携強化を図ることが一案である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)