リサーチ・フォーカス No.2025-045 わが国証券業界の環境変化と今後の政策対応の方向性 2025年11月06日 谷口栄治わが国証券業界では、少額投資非課税制度(NISA)の拡充や日経平均株価の最高値更新等が業績を下支えしているものの、ネット証券の台頭に伴う手数料率の低下等を背景に、競争環境は激化。ビジネスモデルも、従来の有価証券売買に係る委託手数料(フロー収益)中心から、顧客預かり資産に基づくストック収益重視に移行。証券会社の業態別にみれば、①大手証券は多様な事業ポートフォリオのもとで収益構造が複線化している一方、人件費等のコスト負担は相応に大きい、②ネット証券はリテールビジネス(委託手数料)のシェアは大きいものの、店舗や人員を抱えないためコスト競争力に強みあり、③中小証券はリテールビジネスへの依存度が高く、コスト面でも人件費負担が大きい、といった特徴が存在。2025年には証券口座の不正アクセス・不正取引が頻発。これを受けて日本証券業協会は、ネット取引における不正アクセスの防止を目的にガイドラインを改訂し、ログイン時等において、フィッシングに耐性のある多要素認証を必須化する方針。中小証券会社にとっては、顧客基盤や収益機会の維持・拡大のためにネット取引の強化は必要ながら、セキュリティ強化のための投資負担や態勢整備が重石に。以上のような証券業界の競争環境を踏まえ、政策当局として以下の3点が必要に。① 中小証券会社に対する監督強化厳しい経営環境に置かれる中小証券会社に対して、財務指標のモニタリングや内部管理に係る監督を強化する必要。とりわけ、顧客利益を軽視する業務運営となっていないか、地方局における監督態勢が十分か、の検証が重要に。② 優勝劣敗の進展による業界再編への備え一部事業者で事業継続が困難となり、業界再編が生じる可能性。こうした事態に備え、当局は顧客資産の保全や再編時の対応策を事前に検討・準備する必要あり。③ 証券会社の競争力強化に向けた規制緩和の検討証券会社の持続的な経営には競争力強化が不可欠であり、方策として規制緩和が有効に。大手証券会社において、銀行ビジネスの重要性が高まるなか、銀行と証券のファイアーウォール規制緩和も重要な検討課題に。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)