リサーチ・フォーカス No.2025-042 拘束力のある中期財政計画を策定し、財政再建への道筋を 2025年10月09日 村瀬拓人わが国では、財政再建の必要性はかつてないほど高まっている。インフレが長引く中で、金融政策が徐々に正常化されており、これまでの財政運営を支えてきた「長期金利の低位安定」という前提が崩れつつある。このままインフレが定着し、金融政策が完全に正常化した場合、長期金利は上昇し、10年国債金利は3%程度に切り上がる可能性がある。長期金利が本格的に上昇すれば、国債の借り換えが進むにつれて利払い費が増加し、政府債務は一段と積み上がる。今後、長期金利が上昇する中で、わが国の経済成長率は人口減少を背景に低下し、いわゆる「ドーマー条件」が満たされなくなる可能性がある。その場合、基礎的財政収支の赤字が続くと、政府債務は2040年には2,000兆円に膨らみ、その対GDP比は237%と現行(206%)から一段と拡大する見込みである。金利が本格的に上昇する前に、財政規律の確保に向けた仕組みを整備すべきである。わが国のような単年度に偏重した予算編成の下では、後年度へ歳出削減や歳入強化を先延ばしするインセンティブが生じるため、財政再建は難しくなりやすい。諸外国では、財政規律を維持するため、拘束力のある中期的な財政運営の枠組みや財政ルールの下で政策が運営されている。OECD加盟国の3分の2以上が、財政目標の設定や中期の財政計画に基づく予算管理を法的に義務付けているほか、財政ルールの遵守状況などを監視する「独立財政機関」を設置している。わが国でも、①法的拘束力を有する中期財政計画の策定を義務づけ、②独立財政機関を設立すべきである。中期財政計画には、毎年度の歳出上限を設け、補正予算についても例外とせず、財政計画の中で管理すべきである。独立財政機関として、経済・財政見通しを作成している内閣府と税収見通しなどを作成している財務省、債務状況を分析している会計検査院などの機能を統合・拡充することが一案である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)