リサーチ・アイ No.2026-038 備蓄放出主導で急増する米国の原油輸出 ― 現行ペースの供給増は維持困難、減少に転じれば価格押し上げも ― 2026年07月31日 栂野裕貴米国の原油輸出が急増。5月の輸出数量は前年比+60%を上回る高い伸び。内訳をみると、日本・韓国・シンガポールなどアジア向けの輸出が大幅に増加。ホルムズ海峡の封鎖を受けて、中東からの原油調達が困難化したアジア各国が、米国からの代替調達を進めている構図。こうした輸出増加は、新規増産ではなく、在庫取り崩しによるもの。米国とイランの軍事衝突が生じた本年2月末以降、生産量は一進一退である一方、政府による戦略石油備蓄(SPR)の放出や民間企業による商業用在庫の取り崩しが、米国の原油供給を押し上げ。米国の原油輸出は、いずれ減少に転じると予想。備蓄・在庫の取り崩しが現行のペースで続く場合、SPRが来年入り後に枯渇するほか、商業用在庫も来年末に払底すると試算。実際に備蓄や在庫がゼロになることを防ぐため、米国政府や企業はそれらの取り崩しペースを今後抑える公算大。備蓄・在庫からの放出がなくても、日量100万バレル以上の追加増産を行えば、現行の輸出水準を維持できるが、そうした大規模増産は困難との見方が大勢。これまで中東の減産分を米国の供給増がある程度補うことで、原油価格の上昇が抑えられてきただけに、米国の輸出減が今後の価格上昇要因となる可能性。価格面だけでなく、数量面からもわが国経済に影響が生じる可能性も。わが国政府や企業が進めてきた原油の代替調達のうち、約半数は米国からの輸入。石油備蓄が足元で約200日分残っており、即座に石油不足に陥ることはないものの、中東危機の長期化や米国からの調達下振れといったリスクに備えて、米国以外からの調達拡充や石油需要の抑制(省エネ)を進めることが重要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)