リサーチ・アイ No.2026-017
英国の財政規律、地方選挙を受けて高まる緩和圧力 ― 「ドーマー条件」が満たされにくいなか、金利上昇・ポンド安が進むリスク ―
2026年06月01日 ジェイムズ・パターソン
英国では、5月上旬の統一地方選挙を受けて財政拡張に向けた政治的圧力が増大。同選挙では、与党である労働党が大敗。一方、減税や移民抑制を掲げる右派ポピュリスト政党の「リフォームUK」、歳出拡大などを掲げる「緑の党」や「プライド・カムリ(ウェールズ党)」が躍進。こうした投票行動の背景には、物価高に対する国民の不満。
こうした状況下、リーヴス財務大臣は5月中旬、燃料増税の先送りや、一部品目に対する付加価値税の一時的な引き下げなどを発表。労働党内では、2029年までの総選挙に向けて、スターマー首相に辞任を求める動きが強まっている状況。仮に、スターマー政権が退陣し、緊縮財政を批判してきたバーナム・現マンチェスター市長が首相に就く場合、昨年の秋季予算で発表した増税の見送りなどを通じて、財政再建が遅れる可能性。一方、英国では政府債務残高GDP比が高止まりし、基礎的財政収支の改善も課題になっており、財政余地は限られる状況。
英国政府が減税・税収の下振れ分を国債発行で賄う事態となれば、金融市場が不安定化するリスク。財政の持続性をみるうえでは、名目成長率が政府債務の平均利払い金利を上回る「ドーマー条件」が重要。英国の長期金利は足元で名目成長率を上回っており、借換を通じて平均利払い金利の上昇につながれば、同条件は満たされにくくなる公算大。その場合、債務残高の対GDP比を安定させるために、基礎的財政収支を黒字に転換する必要。本来は財政規律を強めるべき局面だが、生活費対策を求める世論を受けて財政拡張が進めば、2022年のトラスショック時のように長期金利の急騰やポンドの減価が生じ、景気後退や物価上昇を招く恐れ。
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