リサーチ・アイ No.2025-121
先送りリスクを抱える英国の財政再建 ― 政治制約のもとで問われる増税の実効性 ―
2025年12月22日 中井勇良
英国政府は11月末に公表した秋季予算案で増税案を通じた財政再建の道筋を提示。個人・法人などに幅広く税負担を求めることで、2030年に約300億ポンドの税収増加を図る見通し。これを受けて、トラスショック以降ひっ迫していた財政目標達成への余裕度は拡大し、金利・株価・為替は一時全面高に。
もっとも、本予算案が審議される過程で、政府の財政再建姿勢は当初よりも後退。歳入面では、増税措置の本格的な実行は28年度以降に先送りされたほか、歳出面では福祉支出の削減が緩和されことから、歳出計画が上方修正。低所得層向けの支援制度で扶養児童数に応じた手当の上限が撤廃されるといった措置も。
こうした方針修正は、労働党政権の支持率低迷が背景。労働党は下院議席の6割以上を占有しているものの、政党支持率は2割を下回る水準。政権発足当初に表明した、暖房費削減などの大幅な福祉支出の見直し方針が世論の反発に。
今後、予算案に沿って財政再建が進むかどうか不透明。とくに増税の実施時期が次回下院選と重なることから、28年度以降に予定される増税措置が見直される可能性。その場合、財政運営への懸念が強まり、金融市場が混乱するリスクも。
(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)

