リサーチ・アイ No.2025-103
新興国における政府債務の増加と新たなリスク― 非居住者の保有比率低下によりレジリエンスは強化されるも、銀行保有の増加が潜在的なリスクに ―
2025年10月29日 桂田健吾
コロナ禍以降、財政支出拡大が世界的な傾向となるなか、各国で財政赤字が拡大。新興国でも政府債務残高対GDP比が24年に69%まで上昇。
新興国は13年の米国の金融緩和縮小時に、非居住者が自国通貨建て国債を売却するなど、大規模な資金流出を経験(テーパー・タントラム)。その後、居住者による自国債保有が促進され、多くの新興国で非居住者の保有割合が低下。一方、国内銀行による保有は増加し、銀行の総資産に占める政府債務の割合は24年に20%まで上昇。
国際通貨基金(IMF)は、25年10月に公表した「Global Financial Stability Report」のなかで、新興国の政府債務について、非居住者の保有比率低下によってショックへの耐性が強まったと評価する一方、ソブリンリスクが金融リスクに波及する「ソブリン・バンク・ネクサス」のリスクを警告。実際、IMFが新興国の銀行セクターを対象に行ったストレステストによれば、政府債務の40%がカットされると、半数以上の国で自己資本比率が10%未満に低下。
以上を踏まえれば、年金制度の整備や保険商品の拡充などを通じて、年金基金や保険会社といった銀行以外の国内機関投資家の育成が重要。わが国としても国際機関と連携しながら、新興国のこうした対応をサポートしていく必要あり。
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