リサーチ・アイ No.2025-100
ドイツ財政拡大、波及効果は局所的 ― 景気浮揚効果も、苦境の製造業には力不足 ―
2025年10月21日 中井 勇良
ドイツ政府は積極財政へ方針転換。2025・26年度予算では、新設のインフラ・気候基金を活用した公共投資や防衛支出が増額。政府は、潜在成長率が資本投入の不足により低下していることを受けて、政府支出や公共投資の積み増しで成長力の強化を図る構え。
こうした財政拡大には一定の景気浮揚効果。試算によれば、防衛支出と公共投資の拡大は産業全体の付加価値を2年間で約4%押し上げる見通し。もっとも、波及効果は局所的なものとなる見込み。付加価値が増加する業種の多くは運輸関連を中心としたサービス業のほか、製造業のなかでも鉱業や「その他輸送機器」などの防衛関連品目に偏る可能性。自動車(付加価値額+0.5%)など主力産業への波及は軽微であり、製造業全体でも1.2%程度の付加価値増にとどまる見通し。
足元の製造業生産をみると、武器・弾薬や航空機などの防衛関連品目は好調であるものの、産業全体に占める割合は小さく、これら品目の増産が全体を押し上げる効果は軽微。今般の財政拡張は、製造業の不振を解消する力に欠く可能性。
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