リサーチ・アイ No.2025-079 原油市場で進む「東西ブロック化」― 需給調整が阻害されれば、原油価格が乱高下するリスク ― 2025年08月19日 栂野裕貴原油市場では、米国や欧州等の西側先進国と中国やロシア、イラン等の東側諸国との間で貿易取引が減少。東西間の取引が世界全体に占めるシェアは足元で3%弱と、2016年に比べて4分の1に縮小。一方、西側諸国同士や東側諸国同士で行われる貿易のシェアは2倍弱に拡大。東西で供給網が分断されつつある背景として、次の2点が指摘可能。第1に、米国の対イラン制裁。トランプ政権は、2018年にイラン核合意を離脱し、同国との原油貿易への制裁を強化。この結果、日欧はイランからの原油調達を減らす一方、中国は同国からの輸入を積み増し。第2に、欧州の対ロシア政策。2022年のウクライナ侵攻を受けて、EUは原油調達先をロシアから米国等に切り替え。これに対し、ロシアは原油輸出を中国に振り向けて対応。東西で供給網が分断される動きは今後も続く見通し。トランプ政権はイランに対する強硬姿勢を維持しているほか、EUがロシアからの原油調達を減らす方針も不変。加えて、7月の貿易交渉を受けて、EUは米国からの原油輸入を大幅に増やす方針。供給網の分断は需給の円滑な調整を阻害することで、原油価格の乱高下を招く可能性。西側諸国は需要に対して供給能力が小さく、供給ショックに自陣営だけでは対応できない恐れ。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)