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リサーチ・アイ No.2025-076

交通インフラ投資の拡大が支えるドイツ経済 ― 400億ユーロの投資増がGDPを1%前後押し上げ ―

2025年08月07日 中井 勇良


ドイツでは、公共投資が長らく低迷。足元の総固定資本形成(除く知的財産投資、住宅投資)・GDP比は、ユーロ圏全体と比べても勢いに欠ける展開。企業の設備投資姿勢が慎重化していることに加えて、公共投資が伸び悩んできたことが背景。公共投資の抑制が経済全体の生産性の向上を阻み、ドイツ経済押し下げの一因に。

こうした状況を受けて、メルツ政権は積極的な財政方針へと転換。2025・26年度予算案では、防衛費に加え、公共投資を強化する方針を発表。3月の基本法改正で創設されたインフラ・気候基金(SVIK)を活用し、29年度までに累計6,000億ユーロ規模の投資を実施予定。特に交通インフラ投資が大きく、今後5年間で1,660億ユーロが投じられる計画。

交通インフラ投資の増額には、設備の老朽化が社会問題となっていることが背景。国有鉄道では、老朽化に起因する遅延が常態化し、物流や人流の妨げに。特に長距離旅客・貨物輸送の定時運行率は5~7割程度と、欧州全体内でも低位。国鉄は設備更改を急いでおり、25年8月には首都ベルリンと第2の都市ハンブルクを結ぶ幹線を9カ月間運休して、大規模な改修工事を実施するなど、交通インフラへの投資が不可欠な状況。

こうした投資拡大がドイツ経済を押し上げる見込み。試算によれば、24年度から25年度の投資増額(約400億ユーロ)は、GDPを0.7%~1.2%押し上げる見込み。25年度予算の閣議決定が6月まで後ずれし、投資実行が例年に比べ遅れていることから、財政政策の効果が本格的に生じるタイミングは来年入り後となる見通し。


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