リサーチ・アイ No.2025-075
住宅着工戸数、法改正が回復の重石に ― 審査対象の拡大とコスト増が下押し圧力 ―
2025年08月06日 堤貴裕
住宅着工が急減。新設住宅着工戸数は季調値年率換算で2025年3月に108万戸に急増した後、4月には62万戸、5月には52万戸と過去最低水準に落ち込み。6月も64万戸にとどまり、戻りは鈍い状況。
急減の背景には、「建築物省エネ法」と「建築基準法」の改正が指摘可能。省エネ法では、これまで説明義務や届出義務にとどまっていた新築住宅について、基準適合が義務付け。さらに、建築基準法改正では、これまで一部審査が省略、または建築確認の対象外となっていた住宅の多くが審査・建築確認の対象に。これにより手続きなどのコスト増加が懸念され、改正前に着工が前倒しされ、改正後に反動減。
当面を展望すると、制度変更による住宅着工への下押し圧力は徐々に弱まるとみられるものの、回復ペースは緩慢にとどまる見込み。政府は、審査や建築確認の対象拡大にかかる負担軽減の取り組みを進めてきたものの、足元では申請の処理が追いつかず、要処理件数が2万件近くへ増加。住宅建設業者・販売会社など関係各所の負担増加なども着工件数の重石となる可能性。
加えて、住宅取得にかかるコスト増も回復の重石に。建築資材の価格高騰や人手不足の強まりを主因に工事原価は近年上昇。駆け込み需要前の水準(年率78万戸)への回復は相当先になる可能性。
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