JRIレビュー Vol.6, No.133 企業が子どもの声を聴くことの意味 2026年04月07日 村上芽2023年に施行されたこども基本法をきっかけに、国や自治体では、政策立案にあたり「子どもの声を聴く」こととなった。企業においては、第6条(事業主の努力)にある雇用主としての役割だけではなく、子どもの声を巡る新たなリスクと機会の兆しを見逃さず、企業としても子どもの声を聴くことの意味を検討すべきである。子どもの声を聴く際のテーマには、子どもにとって身近な学校生活のなかや製品・サービスに関することから、広く国際問題や企業経営にまで広がりがある。企業においては、中長期・短期、リスクと機会の各側面で経営への好影響を生み出すことが期待でき、すでに一部の企業では、これらに取り組んでいる。ただし、子どもの声を聴く際には、「透明性があり、十分な情報がある」「任意である」など配慮すべき要件がある。また、とくに営利性がある場合、過度な消費の助長とならないよう、子どもの声を聴くことの最終目的を自社の短期的な利潤の最大化におくのではなく、自社の経営環境を含む持続可能な経済・社会の実現とするべきであろう。日本総合研究所では「プライバシーの未来と子ども」に関する武蔵野美術大学との共同研究を通じ、子どもの声を聴くことに取り組んだ。その過程を通じ、実践する際には多様性の確保などの課題があることに直面した。また、正解のないテーマを問いかけたい際には、アンケートやインタビューなどの方法以外にも、遊びの要素を取り入れたり、言語以外の方法で子どもの声を聴いたりすることの意義について示唆を得ることができ、企業においてパートナーとの協働が重要であることが分かった。今後、子どもの声が聴かれ、子どもの権利が実現された社会にするためには、企業と政府にそれぞれ役割がある。企業には、子どもの権利と自社事業や従業員とのかかわりについて把握したうえで子どもの声を聴くことが求められる。政府は、企業の取り組みを先導するほか、専門性があり独立した立場から企業にも情報提供でき、また、成長段階にある子どもの代弁者として幅広い課題を取り扱える、子どもの権利に関する独立監視機関設置を検討すべきである。子どもの声を聴くことについて、早期に理想形が実現するわけではない。企業は子どもの発達に影響を及ぼし、やがて大人になったその子からの影響を受けるという認識で「子どもの声を今日から聴き始める」ことが必要である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)