JRIレビュー Vol.9, No.127 観光立国の実現に向けた通訳ガイドの在り方 2025年11月21日 高坂晶子インバウンドを柱にわが国観光が活況を呈するなか、日本を深く知りたいという期待に応え、また、地方圏への誘客と充実した観光体験を実現するため、インバウンドと受入れ側を橋渡しする通訳ガイドの役割が重みを増している。法定資格として全国通訳案内士と地域通訳案内士があるが、専業者が少ない、資質にばらつきがある等の事情から稼働状況は低調である。一方、2018年に無資格の分野別ガイドやボランティアガイド等による有償サ―ビスが解禁され、訪日客帯同の海外添乗員や在日外国人のガイド活動も目立つ。様々なタイプが混在するなか、ガイド活動の総体をなかなか把握できず、有効な施策が打ちにくい状況にある。通訳案内士を中心に活動の現状をみると、①低報酬や繁閑差による成り手不足、地域別・言語別偏在や高齢化を背景としたガイド供給態勢の脆弱さ、②危機管理や環境対応、マネジメントやマーケティング関連の最新スキル・知見の不足、③急速にICT化する業務運営(予約管理、販売・決済、プロモーション等)への対応の遅れ、といった問題が深刻である。法定の通訳案内士に加え、地域や民間発の各種ガイドが混在する現状を整理し、タイプごとに期待される資質や活動を検討したうえで支援策を講じる必要がある。全国通訳案内士については、資質の担保と人材の育成・確保が課題となる。海外事例を参考に、①世界標準のガイド育成に向けたカリキュラムや試験・研修内容、資格更新ルールの見直し、②通訳案内士のみガイド可能な観光地・スポットを設定するなど資格取得に向けたインセンティブの強化、等を実行する必要。一方、分野別ガイドやボランティアなど無資格ガイドに支えられる地域も少なくないなか、①地域固有の観光知識・スキルの修得を促し、地元に強いガイドを育成・確保する、②通訳案内士も含めて最新のガイドスキルや地域情報を共有し、連携・協働するガイドコミュニティを形成する、ことが重要。また、無資格のガイドから通訳案内士への移行に意欲を持つ人材を後押しするため、トレーニングとキャリアパスの明確化も望まれる。業務運営については、ガイドのタイプを問わず、①高付加価値なガイドツアーの開発と販路の強化、②予約・販売管理、プロモーションのICT化をはじめとしたマネジメントの現代化、が急務である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)