Economist Column No.2026-064
SEMICON India 2026からみるインド半導体市場の2つの変化
2026年09月24日 熊谷章太郎
2026年9月17~19日の3日間、インド・ニューデリーで半導体産業の国際展示会「SEMICON India 2026」が開催された。東アジアの地政学リスクが高止まりするなか、新たな半導体製造拠点としてのインドへの注目は年々高まっており、今年の出展社数は約600社と前年(約350社)から大幅に増加した。
例年と同様、今年のSEMICON Indiaでも、複数の企業が新たな投資計画や地場企業との協力の覚書の締結を発表したことが注目を集めた。しかし、今回の同展で実施されたセミナーや出展企業へのヒアリングからは、インドの半導体市場における関係者の見方や関心に、以下の2つの変化が生じていることが窺えた。
■市場は「お祭りモード」から「実務・現実路線モード」へ
第1に、期待先行の「お祭りモード」から「実務・現実路線モード」へのシフトである。昨年までのSEMICON Indiaでは、①インド政府の支援策「ISM(インド半導体ミッション)」の概要、②支援策を受ける投資計画の概要、③「ドレラ特別投資地区」の開発動向、などが大きな注目を集めていた。当時は稼働中の半導体工場がまだ一つもなかったため、市場の関心は政府や企業が掲げる壮大な計画に向けられており、市場は高い期待感と熱気に包まれていた。
しかし、今年のSEMICON Indiaでは、製造装置や原材料の調達環境や人材育成など、実務的な課題への関心が大きく高まった。この背景としては、2026年に入り、米国の半導体製造大手マイクロン、地場財閥ムルガッパグループの半導体子会社CGセミ、地場大手EMS(電子機器受託製造サービス)企業の半導体子会社ケインズテクノロジーなど、複数の企業が後工程の商業生産を開始したことを指摘できる。
中長期の壮大な構想について語り合う場から、現実的な商談の場へとSEMICON Indiaの位置づけが変容するなか、「出展企業数や参加者数は増えているものの、昨年ほどの熱気は感じられない」といった声も一部で聞かれた。
■市場関係者の関心は「ファブの誘致動向」から「エコシステムの発展動向」へ
第2に、市場関係者の関心の広がりである。前年までは、どの企業がインドで半導体を製造するかという、「ファブ(製造工場)の誘致」が最大の関心事だった。ファブの誘致では、レガシー半導体の後工程が特に高い関心を集めていた。
しかし、足元で市場関係者の関心はエコシステム全体の発展動向へと広がっており、ファブを巡る関心もより付加価値の高い工程へ移行している。この背景には、複数の後工程工場が商業生産を開始したこと、政府が製造装置や原材料も支援対象に含む「ISM2.0」を発表したこと、世界的なAI(人工知能)ブームを背景に高度な半導体の自給体制構築の重要性が増したことが挙げられる。こうした潮流のもと、今年のSEMICON Indiaは、「Silicon to Systems: Building the Ecosystem (シリコンからシステムへ:エコシステムの構築)」を掲げ、スタートアップの参入や先端パッケージング技術などについても活発な議論が交わされた。
次回のSEMICON India は2028年3月の開催が予定されている。それまでに、インドの半導体市場は、「工場建設の計画・承認」から、「国内生産の本格化」というフェーズへと移行するだろう。①今年商業生産を開始した後工程工場の製造が軌道に乗るか、②後工程向けの装置や原材料メーカーの進出が進むか、③タタ・エレクトロニクスが前工程の製造を開始できるか、などが大きな注目点となるだろう。
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