飲食料品の消費税率引き下げに向けた税制改正大綱(以下、大綱)が、来週にも、閣議決定される予定である。大綱では、①2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、特例として、飲食料品に課される消費税率を1%(国0.78%、地方0.22%)とする、②財源は、特例公債に頼らず、歳出・歳入全般の見直しで確保することとし、2027年度予算の編成過程で結論を得る、といった方針が示される。飲食料品の消費税率引き下げについては、「責任ある積極財政」の一環として政府が責任を持って、大綱に示される通り厳に2年間で終了することを期待したい。
■若い世代の重い社会保険料負担を早急に是正すべき
筆者は、OECD諸国について、税・社会保険料負担(GDP比)の大きさによって、「高負担国」・「高めの中負担国」・「低めの中負担国」・「低負担国」の4つのグループに分類し、政府支出(同)の大きさと税・社会保険料負担の大きさを比較してみた(注1)。その結果、税・社会保険料負担の大きいグループほど、支出面では、社会保障支出(同)が大きくなり、負担面では、個人所得課税、消費課税、社会保険料といった個人の負担(同)が大きくなる傾向がみられた。このことから、社会保障費の増加に対しては、財源として個人の負担を増やすことで、「受益と負担の関係」と「税による所得再分配」の維持・強化を図ることが、諸外国における標準的な姿であると推察される。
わが国は、税・社会保険料負担の大きさがOECD平均とほぼ同水準であり、上記グループでは「低めの中負担国」内の上位に位置づけられるが、社会保障支出の大きさは「高めの中負担国」を上回っている。このもとで、負担面では、同程度の税・社会保険料負担の国に比べて、個人所得課税と消費課税の負担が小さく、社会保険料負担が大きい。特に、消費課税負担は「低負担国」の平均よりも小さく、逆に、社会保険料負担は「高負担国」の平均よりも大きい。このことから、わが国では、今後減少が見込まれる若い世代に、国際的にみても過度に負担が偏っている可能性が示唆される。早急に是正すべきである。
■法人税引き上げは、消費減税でなく、成長投資や防衛費の財源として検討せよ
飲食料品の消費税率引き下げの財源について、大綱では、来年度予算の編成過程で結論を得るとされるなか、与野党の一部から、法人税の引き上げで賄おうとの議論がみられる。法人税については、コロナ禍等を受けた各国の財政状況の悪化や、世界共通の最低税率15%(グローバル・ミニマム課税)を導入するとの国際合意を受けて、それまでの世界的な税率引き下げ競争に歯止めがかかることが期待されることから、今後の税・社会保険料負担全体の構成を考えるうえで、主要税目の一つとして一段の活用を視野に入れることは妥当である。
ただし、法人税の負担は、最終的には、①生産物価格への転嫁を通じて消費者に、②賃金抑制等を通じて雇用者に、③配当抑制を通じて株主に、帰着するとされている点に注意を要する。法人税負担の帰着先によって、税による所得再分配への影響が異なることになるが、実際にどこに最も多く帰着するかは、企業行動や期間等に左右されるため、明確ではない。このため、飲食料品の消費税率引き下げの財源とする場合、主な帰着先が仮に③ならば、所得再分配としても意味があるかもしれないが、仮に①ならば、価格転嫁が生活必需品で生じやすい点を勘案すると、せっかくの消費税率引き下げの効果を一部減殺してしまうおそれがある点、要注意であろう。加えて、そもそも、消費税が基本的に社会保障の財源と位置付けられているなか、その減税の財源として法人税を充てることは、法人税負担の最終的な負担先が間接的であるだけに、受益と負担の関係が分かりにくい点も難点であろう。
他方で、現在のわが国では、成長投資や老朽インフラの維持更新、防衛など、一国の経済成長や安全保障に係る施策へのまとまった財源の確保が求められている。こうした施策は、企業活動の活性化を通じて個人の所得を増やし、その個人の生命や財産を守る施策と理解される。法人税は、むしろこうした施策の主要財源と位置付けて、負担のあり方を検討すべきであろう(注2)。
(注1)蜂屋勝弘「国民負担の在り方を考える
」JRIレビュー Vol.3,No.121(注2)蜂屋勝弘「法人所得課税をどう見直すか-ポストコロナ時代の法人所得課税の在り方-
」JRIレビュー Vol.2,No.105※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。

