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Economist Column No.2026-050

脱炭素2.0へ移行する中国~「再生可能エネルギー発展15次5カ年計画」から読み取れること

2026年08月05日 王婷


■脱炭素2.0への移行
中国では、2026年7月末に「再生可能エネルギー発展15次5カ年計画」が公表された。これは、6月末に公表された「新型エネルギーシステム建設15次5カ年計画」に続くものであり、2030年のCO2排出量ピークアウト目標の達成、および「新型エネルギーシステムの初歩的実現」に向けた重要な政策文書である。同時に、2060年までのカーボンニュートラル目標の実現に向けた基礎を形成する計画でもある。
前回計画(第14次5カ年計画)までの主要課題は、再生可能エネルギー(以下「再エネ」という)の導入拡大、すなわち供給能力の増強であった。しかし、風力・太陽光発電の導入量が世界最大規模に達した現段階では、課題は「いかに発電するか」から「いかに安定的に利用するか」へと変化している。
このため、本計画の主軸は「規模拡大」から「質的向上と確実な代替」に転換している。言い換えれば、中国の脱炭素政策は、設備導入を重視するフェーズ1から、システム全体の効率化と安定運用を重視するフェーズ2、すなわち「脱炭素2.0」に移行したと理解できる。

■再エネ利用の重点分野
今回の計画では、従来の個別設備の建設を中心とした政策から、供給・送電・蓄電・需要・産業を統合したシステム形成へと政策の重心を移したことが最大の特徴である。こうしたシステム統合の観点からみると、本計画の重点施策は主に3点に整理できる。
第1は、「確実な代替能力」の導入である。「確実な代替能力」という概念は今回初めて導入され、再エネ電源によって化石燃料を安定的に代替するための数値目標が明示された。具体的には、2030年までに風力・太陽光の平均確実出力を8%とし、夏季・冬季の夕方ピーク時の供給比率を20%以上とすること、さらに今後5年間で3億キロワット以上のピーク時供給能力を新たに確保することが目標として掲げられている。これは、単なる設備容量や年間発電量ではなく、電力が必要とされる時間帯に必要な量を供給できるかという観点を政策評価の基準に組み込んだことを意味する。
第2は、再エネの非電力利用の拡大である。計画では、「電力を中核としつつ、非電力利用を突破口とする」との方針が示された。非電力利用は燃料、原料、熱という分野を指す。具体的には、非電力利用量を2025年比で1.5倍に相当する1.5億トン(標準炭換算)まで拡大し、再エネ由来水素の生産量を200万トンまで増加させる方針である。また、余剰再エネを水素、産業用熱、グリーンメタノール、バイオ燃料などへ転換する方向性も打ち出された。この施策は、再エネの需要創出にとどまらず、鉄鋼やセメント、航空など、電気化が難しい産業部門の脱炭素化を進めるうえで現実的な選択肢になることが期待される。
第3は、需要側の役割の転換である。データセンターや工業団地は再エネ消費の中核として位置づけられ、グリーン電力の直接利用、需要応答、仮想発電所などの導入が推進される。ここで重要なのは、需要側が「調整可能な資源」として位置づけられている点である。従来、需要側は供給された電力を受動的に消費する存在とみなされてきたが、今後は電力システムの調整に参加し、再エネ市場の形成にも寄与する主体へと転換していくことになるだろう。加えて、本計画では、重点エネルギー消費産業に対する再エネ電力消費の最低比率の設定や、非電力利用に関する監視・統計制度の整備を進める方針も示されている。これは、需要側に再エネを消費する責任を制度的に課すことで、市場の安定的な形成を促す狙いを持つ。

中国では、前回の第14次5カ年計画までに、太陽光・風力発電の発電コストを低減させるという課題への取り組みは大きく前進した。実際、キロワットアワーベースでは、発電コストが火力発電を下回る水準に達している。しかし、太陽光・風力発電は出力が不安定であるため、その大量導入と安定利用には、蓄電設備(ESS)、送配電網、需給調整機能などの追加的な整備が不可欠である。その結果、システム全体の観点からみれば、再エネのコストは依然として高い。
この課題を克服するためには、発電技術そのものの進歩だけでなく、蓄電、送電、需給調整、市場制度を含む幅広い技術革新と制度整備が求められる。第15次5カ年計画は、こうした次段階の課題に正面から取り組むための出発点と位置づけることができる。
この移行には、技術、制度、市場の各側面において大規模な実験が不可欠となる。その成否は中国国内にとどまらず、世界のエネルギー転換にも大きな影響を与える可能性がある。中国は、国家を挙げて再エネを主力とする新しいエネルギーシステムの構築に向けた実証と制度設計を進めようとしている。

参考資料
国家能源局[2026] 「再生可能エネルギー発展第15次5カ年計画」https://www.nea.gov.cn/20260723/cab1eb6727674bcf9a0efea45ed525e0/c.html
国家能源局[2026] 「新型エネルギーシステム建設第15次5カ年計画」
https://www.nea.gov.cn/20260625/0ccfdc1674e84868b49480edf584eb5f/c.html


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