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Economist Column No.2026-046

「成長投資金融戦略」で示された資金供給チャネルの複線化の重要性

2026年07月24日 谷口栄治


本年7月21日、政府は「成長投資を促進するための金融戦略(『成長投資金融戦略』)」を公表した。本戦略は、これまでの「資産運用立国」の取り組みをさらに発展させ、高市政権で掲げる「強い経済」の実現を目指すための、金融分野にフォーカスした政策パッケージである。同日に閣議決定された「日本成長戦略」でも示されている17の戦略分野等への成長投資を強力に促進するとともに、日本企業の事業再構築・再編を支える資金の好循環を創出することを目的としている。

■「成長投資金融戦略」の概要
「成長投資金融戦略」では、主な施策として以下の4項目が示されている。
1. 金融機関・市場の機能強化
官民連携による17の戦略分野等への成長資金の供給拡大、銀行などの資金供給・成長支援機能の強化、厚みのある金融市場の実現、地域金融力の強化
2. 企業の成長投資を促進するためのガバナンス改革
「コーポレートガバナンス・コード」の改訂、「成長投資ガイダンス」の策定、諸外国とのイコールフッティングを図る会社法見直しの検討 等
3. 国民が経済成長の成果を最大限享受するための環境整備
アセットオーナーの機能向上、資産運用サービスの高度化、家計の安定的な資産形成の促進(DC制度の改善、NISAの普及・定着、個人向け国債の商品性見直し、金融経済教育の推進等)
4. 金融システムを支えるインフラへの投資
オンチェーン金融の推進、AI技術の進展に伴うサイバーリスクへの対処

■重要となる資金供給チャネルの複線化
このなかで、重要な施策となるのが、わが国金融システムにおける「資金供給チャネルの複線化」である。成長戦略を実現するためには、金融機関や金融市場の強力な資金供給力が不可欠となる。とりわけ、わが国では、企業の事業再編を伴う大規模なM&Aや、半導体工場やAIデータセンターといった大型プロジェクトに係る資金調達ニーズが急増している。成長戦略を進めるなかで、さらに資金需要が拡大していくことを踏まえれば、間接金融、直接金融の両面から、資金供給力を強化していくことが重要となる。
まず間接金融については、銀行等の投融資に係る規制緩和が挙げられている。具体的には、大型のM&Aやプロジェクト・ファイナンスへの融資について、大口信用供与等規制の限度額超過を特例で承認するほか、銀行傘下の投資専門子会社がカーブアウト案件や非公開化案件に対して、議決権100%まで出資できるよう規制緩和を行う。
また直接金融に関しては、社債市場の活性化が掲げられている。わが国の社債市場は、米国と比べて、発行額、残高ともに、約20分の1の規模にとどまっており 、発行体サイド、投資家サイドの両面からの喚起策が必要となる。この点、「成長投資金融戦略」では、発行体サイドの対策として、社債未活用の企業に対する知見の提供に加え、規制緩和を通じた小口・低格付社債の発行促進 等が盛り込まれた。あわせて、投資家サイドの対策として、大規模な設備投資を行う企業の社債を取得する金融機関に対し、日本政策金融公庫からの融資を受けられる制度等を整備する。
さらに新たな資金供給チャネルとして、プライベート・エクイティ(PE)ファンドやベンチャーキャピタル(VC)といったノンバンク部門を育成する方針が示された。企業への大規模な出資を行うPEファンドや、スタートアップの資金調達を支えるVCの健全な発展は、企業部門の旺盛な資金需要に機動的に対応していくために不可欠である。そのため、政府系金融機関(日本政策投資銀行(DBJ)、産業革新投資機構(JIC))によるPEファンドへの出資や共同出資といった機能を強化する。加えて、銀行等に対しては、ファンド出資に係る議決権保有規制や自己資本比率規制の合理化を図り、民間資金がノンバンク部門へ円滑に流入する環境を整備する。

■持続的成長に向けた金融の役割
わが国における企業への資金供給は、銀行借入を中心とする「間接金融」が圧倒的な主役を担ってきた。足元でも企業部門の資金需要は強く、銀行の貸出残高は増加基調を辿っている。しかしながら、大規模な事業再編、新産業創出といった今後の旺盛な資金需要を、伝統的な銀行のバランスシートだけで支え切ることは困難であり、成長マネーを持続的に供給し続けるためには、資金供給チャネルの「複線化」が不可欠である。規制緩和等による間接金融の高度化を進めつつも、社債市場の活性化、さらには国内ノンバンクの育成を通じて多様なリスク・リターンを選好するプレイヤーを市場に根付かせることが重要となる。こうした複線的かつ厚みのある金融システムへの転換こそが、わが国の持続的な経済成長をサポートする原動力となるだろう。


※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。
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