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Economist Column No.2026-037

骨太の方針「中長期経済財政計画」を財政規律の向上につなげるために

2026年07月09日 村瀬拓人


政府は、6月30日に公表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2026)」の原案のなかで、「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現に向けた「中長期経済財政計画(計画期間は2027~2040年度)」を示した。財政計画や歳出計画を通じて複数年度に渡り予算運営を管理する手法は、財政規律の向上を目的に広く諸外国で導入されており、財政運営に対する信認を確保するための重要な一歩といえる。

■具体的な数値目標と期限が欠如
もっとも、今回策定された「中長期経済財政計画」が財政規律の向上につながるかは疑問が残る。これは、財政目標の達成に向け毎年度の予算編成をコントロールするための具体的な数値目標や期限が欠けているためである。
まず、財政運営の目標として、「国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下」を中核に位置付けるとしたが、目標とする債務残高対GDP比の水準や達成時期は示されていない。また、基礎的財政収支(PB)は、単年度の黒字化時期を機械的に追わず、景気変動などに応じて一時的な悪化を容認しうると明記された。前年度の骨太の方針では、「2025年度から2026年度の早期にPB黒字化を目指す」、「債務残高対GDP比をコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げる」、という具体的な期限や水準目標が設定されていた。これに比べると、規律の明確さは大きく後退した印象である。さらに、毎年度の予算編成のベースとなる歳出総額や国債発行額についても、「今後の予算編成に当たっては、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規模を精査し、通年の国債発行額などを具体化する」とのみ記されており、上限や目安となる数字は示されていない。
諸外国の財政計画では、「〇年度に経常予算を黒字化する」、「〇年度に債務残高対GDP比を〇%まで低下させる」といった具体的な目標を設定した上で、毎年度の歳出額の上限や目安を示す例が少なくない。財政目標の達成に向けた予算運営の足取りを評価し、適切に見直していくためにも、政府は、財政目標に期限や水準目標を設けるとともに、毎年度の歳出総額の目安を示す必要がある。

■客観的・中立的な財政運営の評価が必要
一方、債務残高対GDP比を中核的な財政目標に位置付けたことで、政府には、これまで以上に客観的・中立的な視点での経済・財政見通しの策定が求められる。「債務残高対GDP比」は、政府の財政運営だけでなく経済成長率や長期金利(実効金利)の動向に左右される(村瀬 [2025]、井上 [2026] を参照)。楽観的な経済見通しの下で過大な財政赤字が許容されれば、経済見通しが修正される度に「債務残高対GDP比が安定的に低下」する時期が後ずれし、結果的に目標自体が形骸化する可能性も否定できない。
今回の「中長期経済財政計画」では、経済動向や財政指標の分析、経済・財政見通しの推計などに関し、「市場の信認確保と分析・検証の強化」が盛り込まれたほか、「経済財政諮問会議において5年毎に財政計画の包括的な検証を行う」ことが明記されたことは評価できる。財政規律の向上に向けては、こうした取り組みを着実に進めるとともに、将来的には、諸外国が設置する独立財政機関などを参考にしながら、財政運営を評価・監視する機能の独立性や中立性を強化していく必要がある。


参考文献
井上肇 [2026].「債務比率低下の中身を問う-PBで確かめる財政規律、見落とせない負担の所在-」、日本総合研究所、リサーチ・フォーカス、No.2026-020.
村瀬拓人 [2025].「拘束力のある中期財政計画を策定し、財政再建への道筋を-金利上昇と赤字継続なら2040 年の政府債務は2,000 兆円に膨らむ可能性も-」、日本総合研究所、リサーチ・フォーカス、No.2025-042.


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