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Economist Column No.2026-018

大阪・関西万博のレガシー展開に求められる視点 -「成果検証委員会」報告書案を踏まえて-

2026年05月11日 藤山光雄


4月27日に、大阪・関西万博の成果やレガシー展開、剰余金の配分を検討する国の「成果検証委員会」(第3回)が開催され、報告書案が示された。
報告書案では、レガシー展開を進めるための取り組みの柱を、(1)万博で創られた「つながり」の拡大・発展、(2)万博を契機とした創造活動の深化・展開、(3)夢洲の「場の記憶」の継承・展開、の3つに整理し、剰余金をそれぞれ均等に配分するとしている。また、取り組みの柱ごとに、大阪・関西エリアで取り組むもの、日本全体・海外も含めて取り組むものに分け、前者は地元自治体・経済界・国が一体となり設置した「未来創造会議」にて、後者は経済産業省とJETROなどの関係機関にて、具体的な剰余金の使途・実施体制を検討・決定していくとしている。
報告書案は、第3回会合での委員等の意見を反映のうえ、6月1日までパブリックコメントが募集されている(注)。そこで、成果検証委員会におけるこれまでの議論や報告書案を踏まえ、万博のレガシーを関西経済の活性化につなげていくために必要な視点として、以下3点を指摘したい。

(注)e-GOVパブリックコメント「大阪・関西万博 理念継承とレガシーの発展に向けて(報告書)(案)に対する意見公募について」
(https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595226021、2026年5月1日)

■関西ならではの成長産業の育成
第1に、関西ならではの成長産業の育成である。万博では、ヘルスケア・ライフサイエンスやカーボンニュートラル(水素・蓄電池など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマなど)、大阪・関西の「食」、中小企業の「ものづくり」など、関西が強みを持つ分野の実証実験や展示、体験が注目を集めた。関西経済の活性化という側面からは、こうした万博のレガシーを関西における成長産業の育成につなげていくことが最も重要な取り組みとなる点をあらためて強調したい。
これらの取り組みについて、報告書(別添2)では具体的な取組内容として、「最先端技術等の実装化・産業化」が言及されている。実際の運営にあたっては、中小企業や大学、研究機関など、とくに万博後の持続的な取り組みに難しさを抱える先への効果的な支援が期待される。

■「関西」「KANSAI」ブランドの発信
第2に、「関西」「KANSAI」ブランドの国内外への発信である。報告書案では、(2)万博を契機とした創造活動の深化・展開として、万博を契機に新たな理念や価値を創造した活動を内外に発信し続けていくことが謳われている。また、(3)夢洲の「場の記憶」の継承・展開では、「夢洲全体で官民が一体となって万博の記憶や成果を日本・世界へ発信する機能の導入を目指す」とされている。
万博の「いのち」や「つながり」などの理念や価値は関西だけと結びつくものではないが、積極的な情報発信は、そうした理念や価値を創造した万博の開催地として「関西」「KANSAI」ブランドをあらためて周知していく絶好の機会となる。夢洲を含む「KANSAI」ブランドの海外への発信は、2030年に開業予定の大阪IR(統合型リゾート)や、その後に開業予定の万博跡地の国際観光拠点などへのインバウンドの誘致にも寄与するものとなり得る。

■切れ目のない取り組みと支援
第3に、剰余金が配分されるまでの期間を含めた切れ目のない取り組みと支援である。レガシー展開を進めるための取り組みへの剰余金の配分は、2028年3月末の博覧会協会の清算後となり、2年弱も先となる。万博に関連する契約や財産・債務処理等に時間がかかることは致し方ないものの、レガシー展開の取り組みは万博の機運を冷ますことなく、切れ目なく進めることが重要となる。
この点は、成果検証委員会の第3回会合でも複数の委員や関係者が指摘しており、会合後の報告書案では、「本報告書に記載されたレガシー展開の取組も、既に動き出しているものがあり、これらの流れを途切れされることなく、国、地元自治体、経済界、学術機関、その他関係機関は早期に取り組み進めていく必要がある」との一文が追加された。剰余金の直接の活用が難しくとも、必要な取り組みに必要なタイミングで支援が提供されることが望まれる。


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