Economist Column No.2025-075
下落・停滞局面に入ったビットコイン価格、改めて認識されるボラティリティの高さ
2026年02月26日 谷口栄治
■ビットコイン価格は最高値から半年で約半値に
本年2月5日、ビットコイン価格が一時6万2,000ドル台まで急落し、その後も概ね6万ドル台での推移が続いている。2025年10月に最高値(12.6万ドル)を付けたあと、半年足らずで約半減するなど、価格下落・停滞が鮮明となっている。暗号資産市場は、2024年から2025年半ばにかけて、ビットコインETF(上場投資信託)の解禁やトランプ政権の親暗号資産業界的な政策姿勢により、「第3次ブーム」ともいえる活況を呈した。もっとも、2025年10月以降は、高値警戒感(ピークアウト)が広がったことに加え、AIバブルやSaaS(Software as a Service)企業の将来性への懸念を受けたハイテク株の下落、金・銀価格の急落、地政学リスクの高まりなど、リスクオフが意識される事象に市場が都度反応する形で、価格下落につながったとされている。暗号資産の法的な定義を明確にする米国の「クラリティ法(CLARITY Act)」の審議が上院で難航していることも、投資家心理を冷やしている。
■暗号資産は「売りが売り(買いが買い)」を呼びやすい構造
もとより、ビットコインをはじめとする暗号資産には、株式の配当や債券の利息のようなキャッシュフローの概念がなく、適正な価格を算定することは困難とされている。少なくとも現時点ではPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった市場参加者の共通認識となる指標は存在しない。そのため、将来の値上がり、つまりキャピタルゲインを期待した取引が投資家の基本戦略となり、価格は投機的な需要動向に大きく左右される。ETFの解禁や規制緩和、それを受けた市場拡大期待といったポジティブな情報が重なれば、「需要増 → 価格上昇 → さらなる需要増」といった正の価格スパイラルに入る。一方で、投資家心理を悪化させる事態が生じれば、「需要減 → 価格下落 → さらなる需要減」という負の価格スパイラルに陥りやすい。加えて、暗号資産投資家のなかにはレバレッジをかけて投資する層もおり、価格下落局面では損失発生に伴うポジションの強制清算(担保資産の売却等)を余儀なくされ、それがさらなる価格下落と損失拡大につながる「スノーボール効果」も指摘されている。ビットコインは適正価格がわかりにくいため底値となる水準が判然とせず、押し目買いも入りにくい。このような「買いが買い」を呼び、「売りが売り」を呼ぶ構造が、暗号資産市場におけるブームと「冬の時代」を繰り返す背景となっている。
■認識すべきはボラティリティの高さ
したがって、ビットコイン価格の今後の動向、具体的には「底値がいくらか」「いつまで価格下落・停滞局面が続き、その後反転するか」を見通すことは困難である。ここで重要なのは、ビットコインをはじめとする暗号資産が極めてボラティリティの高い投資資産(アセットクラス)であることを改めて認識することである。
わが国では、2025年末に金融審議会の暗号資産制度に関するワーキンググループ(WG)が公表した報告書において、暗号資産の根拠法を従来の資金決済法から金融商品取引法へと変更し、法的に「金融商品」として位置づける方針が示された。また、「令和8年度(2026年度)税制改正大綱」において、従来の総合課税(雑所得、最大税率55%)から申告分離課税(20%)へ移行することとされたほか、暗号資産を参照するETFの解禁も検討されている。このようにわが国の暗号資産政策が大きく転換するなかで、暗号資産投資がこれまでよりも身近になることが想定される。今後はWG報告書や税制改正大綱を受けて法改正に向けた動きが加速していくこととなるが、制度整備にあたっては、暗号資産投資のリスクの高さを十分に踏まえ、取扱事業者における顧客への情報提供や説明責任のあり方を慎重に検討していくことが求められよう。
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