Business & Economic Review 1995年09月号
【戦後50年特集 論文】
岐路に立つ日本のエネルギー政策
1995年08月25日 技術情報部 飯田哲也
要約
戦後50年間、日本のエネルギー政策は、「経済成長のためのエネルギーの安定供給」を至上命題としてきた。その間、地球環境問題、エネルギー施設立地をめぐる社会的対立と地域社会への影響、国際社会との軋轢、高いエネルギー価格、高借金経営などさまざまな社会的課題やひずみを生んできている。
この日本のエネルギー政策の変遷と決定メカニズムを概観し、これをスウェーデンモデルを中心に先進諸国と比較することにより、その違いを明確にした。すなわち、欧州諸国のエネルギー環境政策先進国の大きな違いは、環境保全や持続可能社会を基本理念としており関連する政策が統合されていることと、基本的にあらゆる関心層(インタレスト・グループ)が参画することである。
以上のような社会的課題や先進諸国との違いを踏まえて、新たなエネルギー政策の枠組みを提言する。この新しいエネルギー政策の基本理念に「経済成長」にかえて「持続的発展」を置き、あらゆるインタレスト・グループの参加しうる政策決定プロセスを構築し、環境保全や公益性など維持すべき社会ルールを確立した上での市場メカニズムを活用することを提言する。
その実現のために、次の2点にまず取り組むことを提言する。
●エネルギーに関して関心や利害を有するあらゆる関心層が対話を開始するための円卓会議の開催
●環境税など実効の可能性のある政策手段の社会的実験を開始すること