Business & Economic Review 1996年06月号
【URBAN & REGIONAL PLANNING】
フライブルクのゴミ処理対策-ドイツの先進エコロジーシティの取り組み
1996年05月25日 西岡靖訓
はじめに
フライブルクは、92年にドイツ152都市、市町村のなかより、「自然と環境の保全に貢献した連 邦都市」の称号を与えられた。これは、フライブルクにおいて、「自然保護と環境保全が社会シス テムとして実現された」ことが評価されたものである。フライブルク市は、86年にドイツ諸都市に おいて、最初の環境保全局を設置し、自然保護と環境保全を主眼においた種々の政策を多方面で打 ち出してきている。
たとえば交通面では、自動車の利用を抑制し、公共交通機関の利用の促進を図るドイツ初の「環 境定期券」のシステム、自転車専用道や市内自転車置場の整備など自転車の奨励、またすべての住 宅地域における広域的な「速度30kmゾーン」の設定など自動車の保有台数は著しく増えているにも かかわらず、市内の自動車交通量を一定に抑えることに成功している。
またゴミ処理対策では、「ゴミの再利用」により、ゴミの発生をできるだけおさえることを課題 とした「生態学的ゴミ処理コンセプト」により、体系的な仕組みを築き、政策的にも事業的にも成 功をおさめている。
以下、フライブルクをドイツ先進エコロジーシティに押し上げた環境政策のなかで、市民にとっ て切実な問題となっているゴミ処理対策について採り上げた。
1.フライブルクのゴミ処理の基本国zと優先順位
フライブルクのゴミ処理は次の3段階のプロセスに沿って実施されている。
第一順位:ゴミ減少対策
第二順位:ゴミ再利用対策
第三順位:廃棄物処理対策
すなわち、まずゴミを極力出さないことを第1に考え、第2にそれでも発生してしまうものにつ いては、再利用の可能性を探ってゆく。そして、第3に再利用の不可狽ネものについてのみ、廃棄 物としての処理を行う。基本的にはゴミの焼却処理は廃止している。
2.フライブルクのゴミ排出量と再利用の現状(1991年)
なお、フライブルクにおけるゴミの種類ごとのゴミの排出量と再利用の現状をみると、以下のとおりである。排出されるゴミは概ねがアイヒェルブック廃棄場で処理される。また建築資材を除く再利用率は19%にのぼり、ミュンヘンでの数値である12%と比べても高い再利用率を達成している。
(排出されるゴミの量) (t)
一般家庭ゴミ | 48,000 |
粗大ゴミ | 5,000 |
産業廃棄物 | 31,000 |
その他 | 3,000 |
建築材廃棄物 | 193,000 |
小計 | 280,000 |
(再利用されるゴミの量) (t)
再利用可能な生ゴミ | 25,000 |
建築廃材(再利用可) | 150,000 |
その他 | 20,000 |
小計 | 195,000 |
統計 | 475,000 |
3.フライブルクのゴミ減少対策
それでは、フライブルクのゴミ処理における前述の3つのプロセスを以下で具体的に紹介しよ う。
まず第1にゴミの減少対策としては次のような施策により、市民への啓発に取り組んでいる。
(1)子供への環境教育の推進
ゴミを減らそうとする考え方を社会に定着させるためには、フライブルクでは子供に対する教 育が重要であると考えられており、絵を使い、ゴミ処理をわかりやすく説明した子供向けのゴミ 処理カレンダーを発行したり、学校・幼稚園で行われる環境教育プログラムの作成や指導を行っ ている。また、民間の環境グループ「ゴミ教育を主題にした子供向け劇団」についてのお知らせ を行うなど、市民による子供への環境教育に対して支援を行っている。
(2)コンポスト(積み肥)の奨励
個人ベースで実行できるゴミ減少の方法として、コンポストを推奨し、ゴミの農業用肥料への 再利用を促進している。
(3)市の催し物での使い捨て食器の使用禁止とその広報活動
市長声明に加え、議会による議決により、公の場での使い捨て食器の使用禁止が謳われたが、 このように市当局のゴミ抑制への強い姿勢を示すことにより、市民が進むべき方向へのメッセー ジとなっている。
4.フライブルクのゴミ再利用対策
次に、第2のゴミ再利用対策については、次のような方策が講じられている。
(1)一般家庭の分離収集の仕組み
一般家庭からのゴミは以下のような仕組みで収集が行われる。こうした分離収集は、再利用ゴ ミの仕分けを容易にするとともに、有害物質の混入を極力避けることをねらいとしている。
家庭雑ゴミ | 黒いバケツによる定例収集 |
紙類(新聞、段ボール、雑誌・本、紙袋等) | 緑のバケツによる定例収集 |
金属、プラスチック、牛乳・ジュース等のパック等 | 黄のバケツによる定例収集 |
薬物、燃料、電池、シンナー、オイル等 | 別途収集 |
粗大ゴミ | 年2~3回別途収集 |
庭木 | 年2回別途収集 |
(2)Fischer(フィッシャー)リサイクリング仕分け業者の役割。
リサイクル用のバケツで収集された紙類のゴミについては、ベルトコンベア磁石バンド等を使 い、紙、プラスチック、ガラスビン、金属、布等に仕分けをして、フィッシャーと呼ばれるリサ イクリング会社に送る。
(3)第三セクターによる建設廃棄物リサイクリング業
FEBA(フェーハ゛) FEBAとは、1986年にフライブルク市と4つの個人企業が設立した会社である。FEBAでは、建築 現場から出る掘削土と瓦礫を受け入れ、そのなかから木材、プラスチック、金属を取り除いたあ と、粉砕し、コンベアとフィルタによる仕分けシステムで、大きさの異なった粒状の素材ごとに 分別が行われる。それらは定期的に品質の検査を受けて、農業庭園で使われるような細かい土か ら、道路建設や護岸工事で使われるような粒状のものまで、数種類の製品に作り変えられて販売 されてゆく。価格的にも通常の資材と比べても助ェ競争力があるので、売れ行きは好調である。 残土を持ち込む側にとっても、埋立地へ持ってゆけば、建設廃材で86マルク/t、土砂で22マルク /tかかるのに対して、当所で処理すると10~20マルク/tで済むため、コスト面でメリットがある。 そのため利用が広がり、市内発生の産業廃棄物32万tのうち12万tをFEBAが受け入れるに至ってい る。
また、受け入れ、売り渡し、両面で収益を上げているため、財政的には、黒字経営となってい る。
5.アイヒェルブック・ゴミ埋立地とランドヴァッサー地区地域暖房コージェネレーションシステム
最後に第3の廃棄物処理対策について紹介したい。
有害物質を除去した再利用の出来ないゴミはアイヒェルブック・ゴミ埋立地で埋め立てられる が、その地中より発生する腐敗ガスであるメタンガスはガス泉より吸い出し、濃縮したうえで約 4km離れたランドヴァッサー地区Heating Plantへ搬送される。そこでメタンガスはゴミ処理場の 燃料として、燃焼させられ、電気と温水を同時に発生させている。これらは電力、地域暖房とし て利用され、約9,000人分のエネルギーをまかなっている。メタンガスの焼却に伴い発生する総エ ネルギーのうち、電気、温水等の生成に転用されるものの割合で、従来の30%から85%に効率が 向上している。天然ガスも同時に、第二のエネルギー源としての利用が可狽ナあり、熱量の不足 する冬季にはエネルギー供給のうえで補助的な役割を担っている。こうしたシステムに基づくエ ネルギー供給量は現在のところ市全体の約5%に相当するものであるが、地中のメタンガスが枯 渇すると推定されている2010年頃には、完全に天然ガスのPlantに転換出来るものとなっている。 このような仕組みは、いままでアイヒェルブック・ゴミ埋立地で大気中に消散していたガスを有 効利用できるだけでなく、大気の保全にも役立っている。
ただし、問題としては、アイヒェルブック埋立地は1972年に埋め立てを始め、すでに高度40mま で積み上っていることである。同埋立地は2000年には満杯になる見込みであり、別の場所の確保 が将来的に要請される。
おわりに
フライブルグは、ゴミの発生、回収から再利用、最終処分に至るまで、全段階に渡って、自然 保護と環境保全を第一の基本の原則として、自然環境に過大な負荷がかからないような、全体的 な社会システムとして穀zしている。また廃棄物を原料として製品を作るという環境産業の黒字 経営確立に成功しており、システムの安定性を高めている。市は自然保護と環境保全というもの は、市民の理解と協力がなければ出来ないと考え、市民へのキャンペーン活動には殊の外力を入 れている。また、子供への環境教育に意を尽くしている。
他にも、原子力エネルギーへの依存度を現在の60%から引き下げることを目的とする原子力政 策、太陽熱等の新エネルギー開発研究、省エネ住宅の建築推進政策など、一連の政策の目指す方 向性は明確に統合されている。これがフライブルクがドイツ国内で高く評価されているゆえんで ある。ただし、フライブルク市民はこれらの政策にもかかわらず、ゴミ問題がこれからさらに深 刻化することを懸念している。将来に発生するコストをいかに負担してゆくか、環境保全に関し ての市民の意識の高揚、コンセンサス作りをいかに進めることが出来るか、市当局の手腕が試さ れる。
日本においても、多くの自治体でゴミの分別収集や、収集有料化により、ゴミの減量化、再利 用を進めており、リサイクルの考え方が社会システムレベルで実現された循環型社会の形成を目 ざしている。
そのためには、フライブルクの取り組みにみられるように、市民の環境保全への意識をいかに 高めることが出来るかが重要な課題である。
また、地域産業国「に合致し、ゴミ削減にトータルに寄与する静脈産業や地域に適合した環境 産業を創出することにより、ゴミの発生と循環プロセスの内部経済化を図ることが自律的、安定 的な社会システムとしてのゴミ処理システムを穀zするうえで不可欠となるであろう。
行政、市民、産業界が一体となった取り組みが求められている。