Business & Economic Review 2002年12月号
【REPORT】
行政における人事改革の方向性-全国自治体アンケート調査結果を踏まえて
2002年11月25日 研究事業本部 山中俊之
要約
- 日本総合研究所が、2002年8月に実施した全国自治体アンケート調査では、a.勤務評定は、都道府県レベルでは大半の団体で実施されているが、市・特別区では実施率が低く、その傾向は小規模の団体であるほど顕著であること、b.勤務評定を実施する場合の課題としては、都道府県、市・特別区を問わず客観的な評価項目の設定があげられていること、c.目標管理制度については、都道府県および市・特別区を問わず積極的に導入していこうとする姿勢がみられること、d.人材配置における職員の希望に対する配慮は、必ずしも十分とはいえないこと、e.都道府県・市・特別区を問わず大半の団体が、勤務評定の結果を何らかの形で給与に反映させるべきであると考えていること、などが明らかとなった。 このような現状を踏まえた人事改革における課題としては、a.小規模な団体では人事制度改革の実施が困難であるため、人事改革の促進には合併などによる人事部門の体制強化が必要であること、b.行政の現状に即した評価項目の設定とそれを運用するための目標管理制度の構築が必要であること、c.職員の希望を考慮したキャリアディベロップメントの確立が重要であること、d.勤勉手当や特別昇給を活用した評価結果の処遇への反映の方法を構築すること、などがあげられる。
- 上記のような課題に対応するため、第1に評価項目としては、業績とコンピテンシーによる評価項目の設定が効果的である。業績には、顧客満足度などの最終成果、活動実績や企画改善提案などのプロセス成果、スキルや知識の向上に関する能力開発などの結果を項目として入れることが考えられる。コンピテンシーに関しては、すべての職員に共通なコア・コンピテンシー、部門や職種ごとのコンピテンシー、管理職を対象とするコンピテンシーなどに分類し、それぞれの職員の所属部門や職種、職位に応じた項目を考慮することが必要である。これらの項目を評価項目として実際に運用するには、目標管理の効果的な運用や評価者研修も重要となる。 人材育成や人材配置に関しては、長期的かつ計画的な人材育成の手段であるキャリアディベロップメントを構築することが望まれる。そのためには、自己申告書などを活用して、希望する専門分野、必要となる能力要件とそのための能力開発、希望する人事異動先などについて管理職との面接を通じて職員自らが決定することが必要である。また、庁内公募制の活用も、組織の活性化や職員の意欲の向上などの観点から有効である。 給与などの処遇への反映では、上記の評価項目を点数化して、その点数に応じて、S 、A 、B 、C 、D などの査定点を付ける。号俸が上がる昇給および勤勉手当については業績を、また等級が上がる昇格に関してはコンピテンシーを中心に、査定点を反映させることが望ましい。

