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Business & Economic Review 2002年08月号

【FORECAST】
2002~2003 年度経済改訂見通し-政策プライオリティーの再構築を

2002年07月25日 調査部 経済研究センター


要約
  1. わが国経済は輸出に牽引されて2002年1~3月期に底入れ。もっとも、設備投資・個人消費が低迷を続けているほか、各種構造調整圧力も根強く残るなど、国内部門の回復力は脆弱。

  2. アメリカ経済は、2002年中は減速しながらも循環的な回復傾向を続ける見通し。しかし、2003年入り後は、在庫の積み上がり、資産効果剥落などを背景に、減速傾向が強まる見通し。こうしたなか、わが国の輸出も、当面は増勢を維持することが期待できるものの、2003年度入り後は、海外経済の減速に、円高の影響も加わることから、牽引力を失う公算大。ただし、会計不信等を背景とする株価下落による逆資産効果が、年内に景気の腰を折るリスクには要注意。

  3. 一方、国内の各部門では根強い調整圧力が残る結果、回復力は緩やかにとどまる見通し。

    a.企業収益は、人件費削減等リストラ効果により2002年度は大幅増となるものの、
    売上高の低迷が持続するなか、2003年度は増益ペースが鈍化する見通し。こうした収益面での要因に加え、ここ数年加速している海外生産シフトの動きが、設備投資回復の大きな制約要因に。

    b.物価下落幅は若干縮小傾向にあるものの、輸入品の流入持続、サービス分野での価格下落圧力などを勘案すれば、物価下落基調自体は今後も続く見通し。こうしたデフレ傾向が賃金にも波及。春闘ではベア・ゼロ回答が相次いだほか、賃金体系そのものを見直す動きも加速しており、所得面からの個人消費下押し圧力として働く見通し。

    c.歳出削減の方針が強く打ち出されるなか、今後も公共事業の大幅削減傾向は続くことが予想され、とりわけ地方経済へ大きな影響を与える恐れ。

    d.金融機関による貸出金利見直しの動き、地方債利回りの自治体間格差の発生など、信用リスクを正当に評価する動きが進展する見通し。これは、不振企業の業容縮小や財政支出削減圧力を通じて、景気回復力を弱めるという側面があるものの、中長期的には資源配分の効率化を促進。

  4. 以上のような国内経済の状況を勘案すれば、わが国景気の行方は、外需の動向が大きく左右。 外需の牽引力により二つのシナリオが展望可能。

    【標準シナリオ…2003 年度上期まで緩やかな回復傾向】

    2002年度は、国内民需の回復力が緩やかにとどまるものの、アメリカ景気の回復持続を前提とすれば、外需に牽引されて緩やかな回復傾向が持続。2003年度入り後は、企業収益の回復が設備投資・雇用者所得にも多少は波及していくことから国内民需の回復ペースがやや高まる方向。もっとも、2003年度下期には、輸出の減速、企業収益の増勢鈍化から、景気に減速感が出始める。

    【サブシナリオ…2002 年度後半に景気は二番底へ】

    アメリカ経済が早期に失速した場合、唯一の牽引力である輸出が減少するだけでなく、株価下落・マインド悪化を通じて国内民需の減少傾向も続き、2003 年度まで3年連続のマイナス成長を余儀なくされる。

    わが国経済は、循環的な回復局面に入ったものの、a.成長力の落ちた従来型産業では後ろ向きの構造調整から脱していないこと、b.中国等の台頭による国際競争力の低下、海外生産シフトの加速、などを背景に、経済ファンダメンタルズはむしろ右肩下がりのトレンドに入った恐れも。このように、抜本的な構造改革が求められている状況にもかかわらず、税制改革では経済活性化よりも税収中立が重視されているほか、規制改革、行政改革、社会保障制度改革、財政構造改革などの重要分野でも議論は停滞している状況。
    したがって、政策のプライオリティーを「財政再建」から「イノベーション喚起」にシフトし、政策運営のあり方を抜本的に組み直すべき。こうした方針のもとで、短期・中期・長期の時間軸を明確に分けた政策パッケージを打ち出していくことが必要。
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