コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2002年07月号

【STUDIES】
「モノづくり」基盤の維持・発展に向けて-「先進中小製造業」16 社へのインタビュー調査からの政策提言

2002年06月25日 調査部 経済研究センター


要約

  1. わが国産業空洞化に歯止めを掛けるための有効な手立てを探るべく、当社は今般、独創的な製品・製造技術を軸に国内の事業基盤を堅持しつつ、市場競争力を維持・増進させている「先進中小製造業」16社にインタビュー調査を実施。

  2. インタビュー調査によると、「先進中小製造業」各社は、独自技術・ノウハウに基づいて得意分野を有することはいうに及ばず、経営上の三つの「鉄則」を通じて強みを確立。

    (イ)明確な「ポジショニング」・・・「大手企業・海外企業が手掛けるのは困難な分野」「ベルトコンベヤーに乗せてはつくれない分野」で製造技術を高度化。

    (ロ)積極的な「先行投資」・・・技術革新の波に乗り続けるべく、先行投資を果敢に実施。

    (ハ)技術と市場の「マッチング」・・・技術蓄積や製品開発の方向性を市場トレンドに適合させるために、さまざまな工夫を実施。

  3. 加えて、各種政策の活用状況や、政策に関する意見・要望などから、以下のような政策課題が浮き彫りに。

    (イ)「ベンチャー支援策」「助成金制度」「産学連携」といった現行の産業基盤強化策の効果は限定的。運用上の問題が大きく作用。

    (ロ)知的財産創造のための仕掛けとして「特許制度」には限界。海外での模造品被害抑止効果も限定的。

    (ハ)「国際的に高いビジネスコスト」「不公平な法人税制」が、わが国の産業空洞化を加速させる方向に作用。

  4. 以上を踏まえると、「モノづくり」基盤の維持・発展という観点からみた場合、わが国では「産業政策のミスマッチ」が生じていることに加え、運用面における改善の余地が大きいと指摘できる。わが国には、長年の研鑚をベースにした独自の技術・ノウハウをもつ中小企業が、現在でも依然として多く存在。問題は、そうした技術・ノウハウの多くが「市場化」(商品化)できなかったり、「ファイナンス」面での障害により、事業として結実できる確率が低下してきている点にある。政府は、そうした現状認識に立ったうえで、中小企業をこれまでのような「保護」の対象としてではなく、各企業が持つ独自の技術・ノウハウの市場化やファイナンスを「支援」する、という政策スタンスへ、政策の基本方針を名実ともに転換する必要。具体的なプランは以下の通り。

    (イ)成長企業の再投資を誘発し、成長分野をさらに伸ばせるような法人税制に抜本見直し
    ・・・外形標準課税の全面的導入、「法定耐用年数」(設備償却期間)の大幅短縮

    (ロ)埋もれた有望技術とリスクマネーを結びつける仕組みの整備
    ・・・技術集約型企業への民間融資の促進、「エンジェル」機能の強化、行政審査の現場視察、「事業共同組合」の設立支援

    (ハ)知的財産で国富を稼ぐためのアメリカ型の国家戦略策定
    ・・・技術育成・通商・知的財産保護のリンケージ強化、特許審査の厳格化
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ