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Business & Economic Review 2002年07月号

【REPORT】
生物資源利用の公平性-保全・開発の協力ゲーム

2002年06月25日 調査部 環太平洋研究センター 渡辺幹彦


要約

  1. 「生物資源」は、21世紀の基幹産業の一つであるバイオインダストリーにとって、必要不可欠である。また、生物資源は、ゲノム解析後の医療・創薬への応用など、最先端バイオ技術にも必要とされている。

  2. 日本は、生物資源を、国内だけではなくアジアを中心とした海外にも求める必要がある。この場合、「資金・技術はあるが相対的に資源に乏しい先進国と、資金・技術は比較的少ないが生物資源が豊かであると見込まれている開発途上国」という関係が成り立っていることに注意が必要である。
    以上のことから、幹線道路沿線などで定常的に大気汚染が発生する地域でみられる呼吸器系の疾患患者救済に関しては、まず疫学調査などに基づいた「最低限達成されるべき基準」づくりが必要となるだろう。そして、この新たな基準と連動した患者救済制度を新たに設けるべきである。さらにその基準への適否と連動した交通規制についても、より踏み込んだ権限を都道府県に与えるべきである。

  3. 生物資源の国際的利用は、1993年に発効した生物多様性条約(Convention on Biological Diversity;CBD )によって規制されている。CBDの目的は、生物多様性の保全と利用の二つである。 CBDには、生物多様性を保全するための「環境」条約と、生物資源の産業利用のルールを定めるための「資源」条約のニつの側面がある。CBD条項の中で重要なのは、生物資源の主権的権利が資源保有国にあること、及び、複数国間で資源を利用する場合に、そこから生じる利益の配分が公平でなければならないことである。

  4. 2002年4月に開催されたCBDの第6回締約国会議(The 6th Meeting of the Conference of the Parties;COP6)では、生物資源の利用から生じる利益配分の在り方に関する「ボン・ガイドライン」が採択された。同ガイドラインは、利益配分に関する公平な手続きを、自発認証システムにより定めている。同ガイドラインの採択はCBDの進展に寄与するものと評価されるが、改善の余地を残している。

  5. 本稿では、ボン・ガイドラインの改善に貢献するために、生物資源の利用から得られる利益配分の公平性を判断できるような、数値を伴った枠組みについて考察する。「協力ゲーム」の枠組みを、インドネシアのスマトラ島で実施された「ケリンチ・セブラト国立公園保全・開発総合プロジェクト」にあてはめる。協力ゲームを用いると、インドネシアの生物資源を利用する先進国企業、インドネシア政府、プロジェクト実施地区の周辺住民の3者間での、公平性を満たす利益配分の「範囲」を特定することができる。

  6. 公平性を満たす範囲を特定するために協力ゲームを適用することには限界があり、現状では、試験的なものにとどまる。しかし、協力ゲームの適用は、CBD本来の目的にかなったボン・ガイドラインの改善に貢献できる枠組みを提供するものであり、数値枠を伴った利益配分の公平性基準として検討されるべきものである。
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