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Business & Economic Review 2002年04月号

【REPORT】
関西経済の環境の変化と今後の課題-2002年度関西経済の見通し

2002年03月25日 調査部 関西経済研究センター


要約

  1. 1.2001年度の関西経済は、生産活動の急速な低下など、企業部門を中心に後退色が強まった。雇用・所得環境や消費者マインドの悪化から家計部門にも調整圧力が波及し、景気後退色が一段と強まっている。生産活動、経済成長率などの動きは、全国の水準を下回る。

  2. 全国と関西の経済成長率をやや長期的に比較すると、従来、景気回復期には関西が全国平均を上回っていたが、1999年から2000年の際は、上回ることができなかった。その背景には以下の4点が生産活動に負の影響をもたらしていることが指摘できる。

    第1の要因は、IT・自動車関連産業の集積度の低さである。99年から2000年末にかけての回復期は、IT需要が先導する形で拡大したが、関西では、IT関連産業の寄与が相対的に小さく、生産活動を全国ほどに押し上げなかった。

    第2の要因は、アメリカ向け輸出の寄与度の低下である。IT・自動車関連のウエートが小さいことが、アメリカ向け輸出低調の最大の要因にあげられる。今年後半に期待されるアメリカ景気の回復も、関西への寄与度は小さいと予想される。

    第3の要因は、中国経済の台頭である。中国からの輸入の急増と中国をはじめとした海外への生産移転が、近年の関西製造業の生産基盤弱体化に結びついている。その動きは、繊維製品から機械分野へと広がろうとしている。

    第4の要因は、厳しい地方財政である。関西の公共工事が全国に比べて低調な原因として、地方税収の不振による財政の窮乏があげられ、公債費も近年では全国を上回ってきている。

  3. 今後を展望すると、2002年度の関西の実質経済成長率は▲1.3%と2年連続のマイナス成長が予想される。関西においては前述のマイナス要因が残存するため、関西の景気回復テンポは全国に比べて相対的に鈍いものにとどまろう。

  4. こうした厳しい状況において、関西経済が活力を維持・改善していくための取り組みとして、以下の5点があげられる。

    第1は、中国のWTO加盟の有効活用である。中国への輸出・投資環境が改善していくことは、対中輸出の拡大など関西経済にとってメリットとなる。また中国との連携を深め、互いにすみ分けを図っていくことが望まれる。

    第2は、都市再生の積極的展開である。生活環境の改善や競争力の高い都市型産業の集積高度化を通じ、都市の再活性化を目指していく取り組みが欠かせない。

    第3は、一般産業のIT化の推進である。首都圏では依然ソフト面でのIT投資が続いており、関西でも一般企業のIT化への取り組みを積極化し、より多様な効果を引き出すべきである。

    第4は、雇用対策の強化である。サービス産業の雇用吸収力が鈍い現状を打破するため、サービス産業での雇用機会を創出する方策を図っていくことが重要である。

    第5は、観光客の消費喚起である。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は予想以上の集客力をみせているが、これを観光消費の起爆剤として、より効果的に活用すべきである。

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