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Business & Economic Review 2003年01月号

【FORECAST】
2003~2004年度わが国経済の展望-デフレ・信用収縮スパイラルの回避に向けて

2002年12月25日 調査部 経済研究センター


要約

  1. わが国経済は、輸出・鉱工業生産の増勢鈍化をきっかけに、夏場以降、景気に足踏み感。加えて、秋口に不良債権処理加速の政策方針が打ち出されて株価が大幅に下落したことから、企業・消費者マインドの悪化が懸念されている状況。

  2. こうした状況下、今後を展望するうえでポイントとなるのは、a.海外経済、とりわけアメリカ・アジア景気の動向と、輸出依存型成長の持続性、b.デフレの長期化が予想されるなか、国内民需の回復力が高まるかどうか、c.不良債権処理、産業活性化、財政再建など経済政策の方向性とその効果、の3点。

    (1)アメリカ経済は、a.住宅価格上昇による資産効果減衰、b.設備投資の調整局面持続、c.雇用環境の本格回復は期待薄、などが足枷となって、2003年入り後は景気減速が明確化する見通し。アジア経済については堅調さを維持するものの、アメリカ経済の減速の影響が徐々に波及し、アジア域内の生産活動も、電気機械製品を中心に増勢鈍化へ。この結果、わが国輸出の景気牽引力は低下していく見通し。

    (2)長期化しているデフレーションの基本的原因は、「マネー供給の不足」ではなく、実体経済面に求めるべき。 すなわち、アジア新興国が急速にキャッチアップするなか、国内での成長フロンティアの開拓が遅れ、需給ギャップが拡大していることがデフレの原因であり、この点を解決しない限りデフレの解消は困難。
     デフレからの脱却が当面見込まれないなか、内需の低迷は長引く見通し。すなわち、設備投資は、a.企業業績の悪化に加え、b.キャッシュフローを債務・資産圧縮に優先的に割り当て、c.生産コスト引き下げを重視して海外生産シフト加速、などを背景に減少傾向が持続する見通し。個人消費は、一部に底堅い分野もみられるものの、企業活動の縮小指向の影響を受けて所得環境が悪化を続けることに加え、消費マインドも弱含むと予想されることから、ここ数年の特徴であった「景気の下支え」役を期待することは、もはや困難。

    (3)現下のわが国経済は、バブル期の「負の遺産」が景気低迷の主因となっている状況ではなく、期待成長率の大幅低下、デフレの長期化という「新たな調整局面」に入っていることを認識すべき。こうした観点から現在の経済政策を評価すると、a.不良債権問題はデフレの結果という側面が強いため、真に実効性ある産業再生スキームが伴わなければ、不良債権問題の解決は困難、b.財政再建路線も、「緩やかな景気回復」という前提条件が崩れた以上、やみくもに数値目標に固執するのは弊害大。

  3. 以上を踏まえて先行きを展望すると、株価の低迷が続くなかで、a.世界経済の減速により輸出の牽引力が低下、b.企業業績の悪化、海外生産シフトの進展、不採算部門からの撤退などを背景に設備投資を先送りする動きが拡大、c.雇用環境の悪化が続くなか家計マインドも弱含み、といったマイナス要因が強まることから、当面は景気後退局面が続く見通し。景気が底入れするのは、アメリカ経済の成長率が高まり、輸出主導回復が実現する2004年度後半にまでズレ込み。

  4. 経済の成長力が低下するなか、中途半端な企業再生スキームのもとで不良債権処理を急進的に進めれば、結果的に清算型の問題企業処理が増加し、デフレの一段の加速、新規不良債権の急増という悪循環に陥る恐れ。
     そもそも経済全体の活力低下がデフレの原因であることを踏まえれば、産業活性化・成長促進こそ政策の基本に据えられるべき、これを基本理念に政策フレームワークを抜本的に組み替えていくことが必要。さらに、こうした政策の効果が顕在化してくるまでの3年間は、日本経済がデフレスパイラルに陥らないように、景気中立を目指したマクロ経済政策を運営していくべき。
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