アジア・マンスリー 2026年2月号
中国の2026年経済運営方針
2026年01月28日 佐野淳也
2026年の中国は、内需喚起による安定成長の確保という方針の下で経済政策が実施される。もっとも、内需刺激策の力不足感が否めないなど、習近平政権の思惑通りの展開となるかは予断を許さない。
■二つの計画・方針に基づく経済運営
中国では、昨年末にかけて、二つの重要な経済運営計画・方針が策定された。
一つ目は、10月に公表された第15次5カ年計画の草案である。5カ年計画は、経済・社会の針路や期間中に達成すべき目標、主要な取り組みが包括的に盛り込まれる、中国にとって最も重要な中期計画である。草案の採択後、政府が数値目標などを追加して策定した正式版が3月の全人代(国会に相当)で採択され、これに沿って2030年末までの政策運営がなされる。
二つ目は、12月に示された2026年の経済運営方針である。これは、共産党と国務院(中央政府)が合同で開催する中央経済工作会議で決定される。この方針に基づき、年間の経済・社会発展計画などに具体的な政策メニューが肉付けされ、3月の全人代での採択を経て政策が本格的に動き出す。
以下では、これらの特徴を整理し、2026年の中国経済の運営方針について考察する。
■第15次5カ年計画の特徴
第15次5カ年計画草案は、計画の重要性や指導方針を示した冒頭の二つの章が総論、次いで各論として12の産業政策や内需拡大といった主要な取り組み事項が並び、最後に計画目標達成に向けた取り組み(党の指導)で締めくくる構成となっている。3月の全人代で採択される正式版でも、構成などはこの草案を踏襲する公算が大きい。草案を基に、第15次5カ年計画を評価すると、次の二つの特徴が挙げられる。
第1に、製造強国の実現を最優先目標と位置付けたことである。目下、中国が目指している強国像の中心にあるのが、製造強国である。中国経済に占める製造業の割合は他の主要国に比べて大きく、現状でも世界有数の製造大国ではある。しかし、その現状に満足せず、製造業を中心に産業基盤の強化を図る方針の下、集積回路や工作機械、ソフトウェアといった重点基幹核心技術でのブレークスルーを挙国体制で実現し、高い国際競争力を獲得しようとしている。
第2に、経済や人材などで「量より質」を追求する姿勢を強調したことである。例えば、具体的な経済成長率の目標値は示さない一方、技術革新や生産効率の改善が反映される指標である全要素生産性の向上で「合理的な成長」を図る、という方針が明記されている。人口大国よりも人材大国を目指すという方針を反映してか、単なる経済の量的成長の追求よりも一人一人の人的資本を高めることに軸足を置いた内容となっている。
■厳しい景気認識を示した2026年の政策運営方針
次に、中央経済工作会議で示された本年の経済政策運営の方針についてみると、2026年は5カ年計画のキックオフとして位置付けられるだけに、方向性や目標は第15次5カ年計画と基本的に変わらない。
ただし、経済の現状認識において「国内の供給過剰と需要不足の矛盾が顕著」と、これまでになく厳しい見方が示された点が特徴的といえる。
そうした認識の下、本年の経済政策運営においては、内需、とくに消費の拡大を優先する方針が示されている。消費喚起策として、2025年3月に打ち出された「消費促進特別行動計画」の推進に加え、所得増プランの策定と実施、購入制限規制の緩和、耐久消費財買い替え政策の継続など、多くの措置が盛り込まれている。また、デフレ圧力の高まりを受けて、物価の合理的な上昇を目指す方針を示したことも、危機感の表れとみられる。
このように習近平政権は、中期的には製造強国の実現という供給面の強化を重視するものの、2026年に限れば、需要面に重きを置いて内需拡大を優先させる構えである。5カ年計画の諸目標を達成するために、まずは経済体力の強化を目指す意図であると考えられる。
■難しいかじ取りを迫られる習近平政権
もっとも、中国経済はさまざまな問題に直面しており、習近平政権は難しいかじ取りを迫られそうである。中期的観点では、過剰な供給能力の是正が最大の課題である。今後の製造強国に向けた各種施策が、企業による投資拡大競争を誘発し、経済全体で過剰投資を深刻化させかねない。
短期的観点では、内需刺激による安定成長の確保が課題である。中央経済工作会議では、内需拡大の必要性を強調する一方で、財政規律の堅持など抑制的なスタンスも同時に示されている。一連の消費刺激策についても、規模などの面で不十分な印象は拭えず、3月の全人代でより積極的な内需喚起策を打ち出せるか否かが、当面の焦点となろう。
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