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適応ビジネスが温暖化の話題の中心になる日は近いか

2009年07月01日 佐々木努


 先日、地球温暖化の適応ビジネスについて取材を受ける機会があった。
 これまで日本では、地球温暖化といえば再生可能エネルギーや排出権取引、電気自動車など温室効果ガスの排出抑制対策の話題(これを気候変動の分野では「緩和」対策と言う)が中心であった。実際、新聞やテレビなど日々メディアを賑わせている内容のほとんどが「緩和」に関するものだ。そのため、取材依頼を受けたときには驚いた。

 「適応」とは、海面上昇や異常気象など気候変動により生じる影響を回避したり、順応するための方策を指す。これには洪水被害や渇水による不作など直接的な影響への方策はもちろんのこと、そうした影響を企業が被りビジネスに影響が及ぶことや、さらにその影響がサプライチェーンを通じて他の企業に連鎖的に波及していくことも含まれる。これら温暖化と企業活動のリスクについては、小職のコラムを参照いただきたい。

 さて、取材の際に話題となったのは、「適応」に対する認知度が非常に低いことであった。
・農林水産業が適応に関係が深いことを想像することは容易だが、実際に対応を検討・実施している企業は少ない。
・一次産品を原料として利用する食品産業が影響を受けることも想像できるが、取り組みを進める企業は少ない。
・そうした産業が抱えるリスクをチャンスに変えるようなサービスの提供を検討している企業は、ほとんど存在しない。
・取り組みを進めたり、検討している企業でも「適応」を意識していない事例も見られる。

 企業活動を行う上で「温暖化」を意識する土壌は形成されつつあるが、それはあくまで「緩和」に関するものである。具体的な適応ビジネスについての議論は紙面の都合、別の機会に紹介することとするが、適応ビジネスにももう少し目を向けてみてはどうだろうか。「適応」の視点が自社のビジネスのドライビングフォースとなる場合も少なくない。また、これまでの温暖化ビジネスとは違ったビジネスチャンスを発見できるかもしれない。
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